医師異動時のマタハラ2017/07/26 09:04

大阪の医療センターで、勤務予定きまったあとに妊娠した女医に対して、採用先の女性診療科長がいまどきいろいろおっしゃったらしい。

朝日新聞(朝鮮日報ではない)
採用予定の医師にマタハラ 大阪の医療センター部長
太田成美2017年7月25日01時06分
「センターが小児科の女性部長を厳重注意としていたことがわかった。」「女性医師は昨年末ごろに採用が内定し、今年4月から勤務予定だった。今年2月、妊娠がわかったと、部長にメールで伝えると、部長は「病院に全く貢献なく、産休・育休というのは周りのモチベーションを落とすので、管理者としては困っている」と記し、「マタハラになるかもしれない」としつつ、「非常勤で働くのはどうでしょうか」と送り返したという。」

ここに書かれた以上の状況も知らず、医師における一般論だけで書きます。

こういう話はぜんぜん珍しくなくて、「私は頑張ってきたんだからおまえもぎりぎりまで産休なんかとるな」と後進女医さんを蹴り上げる上司女医さんの話はよく耳にします。とある女医さんからは「女医の敵は女医」というセリフもききました

ただ、勤めていて妊娠したというならともかく、ほぼ半年後の採用がきまってから妊娠がわかって勤務開始でいきなり産休-育休となると、たぶん、医療関係ではむしろこの女性科長に同情的な向きが多いでしょう
感情移入して、中小工場で人手カツカツのばあいこんなことが通っちゃこまるというひとがいてもおかしくはない。しかしそういう工場は面接採用即勤務です。半年先なんて悠長なことは言わない。
そして、半年もあれば人間妊娠くらいします

勝手なきめつけかもしれんが妊娠年齢ですから、若手からせいぜい中堅。そういう時期の医師の異動については、おおくの場合大学医局のひも付きと思います。半年前にきまってるあたり、後期研修おわったか院をでるかのタイミングじゃないかと思わせる。
大阪医療センターは、単一医局ではなかったと思いますが、ほとんどの医師にひもはたぶんついてるでしょう、すくなくとも入ってくるに際しては。

そういう状況で大学から持ってこられた人事ってのは、診療科長にしてみたら、自分で決めたわけじゃない。で、仕事がたくさんあるのにさっさと産休なんてどうしてくれようという気分になるのはわからなくはない
まあ、病院の独自採用ということもあるかもしれんけど、なににしても、大学医局が派遣先として確保するに値する、この手の病院での診療科長の、人事異動に関する発言権なんて、まず、なきに等しいものです。

ここで科長が、自分でできることは以下です。
1) のこった人間で、一人減をカバーするように体制をつくる。
2) 人事きめてる大学医局か病院事務に、もうひとり確保させる。

1)は全体の仕事量をかえないにしてもそれを減らすようするにしてもなかなか大変ですが、だったら、2)をちゃんとやったのかというのが報道ではわからない。

ただ、Eメールのやりとりからみて、どうもそういう文脈ではなく、話をきいてお前がくると困るから、と本人にまず直接やってしまったのではないかと想像します。

大学医局人事の一環の人事異動で、くる予定の女医が産休予定なのは、むしろ診療科長としてはなんとでもいいように利用できる状況と思うのですがねえ。
独自の人事なら院内事務がからんでるだろうからそっち、あえていえば院長レベルまでケツもっていけるし。
医師もう一人もってきてくれ、無理なら楽になれるよう外来減らすなり当直減らすなり院内システムをいじってくれ、受け入れ患者数が減るのはむしろ当然だ、残った医師に負担がふえないように支援システムをつくれと、胸を張って主張できるではないですか。
営利企業のトップだとそういうわけにいかんが、公共インフラの中間管理職ですからねえw

育休取得は就職後一年目以降可能で、それまでの場合は非常勤になると規則になってることも多いとかとか。一般病院もたいがいそのようです。大阪医療センターというと、みなし公務員で相当手篤いでしょうから実際にどうか知りませんけどね。
厚労省も、このように↓ 出してる。

2 以下の要件に該当する場合は育児休業を取得できません、.
(対象外とする労使協定がある場合に限る
雇用された期間が1年未満
②1年以内に雇用関係が終了する
③週の所定労働日数が2日以下

だから、この科長の考えたことは、実は社会のシステム上そんなにずれているわけではない、問題は、それが事前にちゃんと明文化された規則としてあるか、それをどのように説明するか、だけです。

この科長も自分でなんとかしようとせず規則にのっとるか、規則がないんだったら、上に書いたように、実際に人事決めてきた大学か病院事務や上層部に増員対策を放り出して、何ともならなきゃ業務量減らせばよかったのに、と、いちおう診療科長(いわゆる責任部長)をやったことのあるものとしては、思います。
なんせ雇われ管理職、筋を通して開き直ればけっこうコワイものがないのですよ。

中間管理職が上とか体制とかを忖度して頼まれてもないのに下を踏むなんてよくある、状況も知らずに書いてますが。
そういう忖度を、「責任感」と呼んで賞揚してきた文化ですから、この診療科長のやったことはどこにでもあるし、私もあなたもどっかでやってる

ところでこの話は、とうの女性診療科長にも病院長にもありがたくない形で終わってしまった。

「センターは、部長のメールの内容は、男女雇用機会均等法で防がなければならないと定める妊娠、出産などを理由に不利益な扱いを示唆する言動で、いわゆるマタハラだったと認定。部長を厳重注意、監督責任のある病院長を所属長注意とした。女性医師はセンターで勤務しなかったという。」

いらんこというから悪い」という扱いですかね、これは。
別の医師が定員充当したのか、けっきょく欠員のままいくのか、診療科長の扱いが今後どうなってしまうのか、もうわかることはないでしょうが、なににしても、自分に決定権のないことは、その場でなんとかしようとせず、さっさとどっかにもっていくのが安全という組織人の知恵を周囲の人たちは再認識したことでしょう。
なんとかしたら大栄転が待つような内容でもないんで。

みんなで昼寝(笑2016/06/15 18:10

病院にはたいがい医者の居場所がかためてつくってあって、医局と呼ばれる。
医局には、多くの場合、ラウンジとかいうちょっとゆっくりできる所がある。ソファがおいてあったりするわけです。

以前にいた病院では、特に昼前後だがそのほかの時間でも、出番じゃない医師が、いくつもあるソファにみなひっくり返ってごろごろ寝ていた。
死体置き場みたいやなと思った。私もそのうち死体のほうに回ったわけですが。

そういう場所もない病院もあって、せまい自分の空間で、デスクワーク用の背もたれ椅子にのけぞって寝るとかしていた。

文化勲章をもらわれたかっての恩師は、大学で教授して研究室動かしてられるとき、論文などを手入れする合間によく教授室のソファでねころがってられた。たまに、コミック雑誌もよんでられた。世界でも一線の論文です。集中すれば半端じゃなく疲れるでしょう。
夕方、教授室からでてこられた教授がそこにいた院生に「ああやってハイバラ君も一人前になるんやなあ」とかいわれて、院生は、そんな名前のひとが研究室にいたやろかと不思議がっていた。当時週刊モーニング連載中の、「ナニワ金融道」やでそれは。

ちなみにそういうコミック雑誌ですが、もちろんご自分で買われたのではない。いろいろ煮詰まると熊のようにうろうろ教授室から出てこられて、研究室をうろつかれる。誰かが買った雑誌があるとそのまま持って教授室に戻られるのである。そのうちそれを覚えたみんなが、研究室に入ってすぐの決まった場所に雑誌を置くようになって、やってきてすぐに持って帰られるようになって、みんな平和に暮らしたという話をきいたw
話がずれました。

ちょっと休みを入れてリフレッシュというのは、ですから、よくわかります。

シエスタを中学で導入したのですと。以下写真含め引用。

2016/6/15 05:30神戸新聞NEXT 午後の集中力向上へ 加古川中で「シエスタ」試行
「兵庫県加古川市の加古川中学校で14日、昼休みに仮眠を取る「加古川シエスタ」が始まった。「シエスタ」はスペインなどで伝統的に行われている「昼寝」。短時間の休憩を取ることで、午後からの授業や部活動への集中力を高めるとともに、電気を消すことで省エネに貢献しようと、同中学校生徒会が企画した。(小林隆宏)」




ううむ、、、
デスクに突っ伏して寝るのはしんどいよ。

昼休みにいままで昼寝したくてもでけんかったんやろうか、みんなそろってやらんと昼寝もでけんのかというのがちょっと不思議です。

午後の授業での就眠率のあまりのよさに、教師が生徒会にそうさせたということですかねえ。
節電て、昼休みの教室はふつうに電灯を消したらあかんのかな。廊下も消したいって?ところどころしか点けないというのはしないのか。

いまどきの中学の現場知らんもので、不思議がるポイントを外してたらごめんなさいまし。

症例の相談2015/02/18 10:33

以下、フェイクとして読んでください。
むかし一緒に働いたもと部下の医師に、勉強会であったところ、いまこういう症例があって難儀している、という話になった、との設定です。

申し訳ないけど、非常に見通しの暗い症例で、なにをやってもほぼ失明状態になりそう。いってみると、PDR の NVG で、きれいに PPV すみ CB なかばまで術中 LPC してるが眼圧がどんどん上がっている、それを、今の上司部長は抗ベバシズマブ抗体いれたきり、それでも下がらないのになにも方針が出ないどうしたらいいだろう、という感じのぼやきです。その地域中核病院では、ことのほか指導が厳しくて、もと部下はすでに専門医であるが方針はすべて今上司がきめるのですと。

全身状態不良、視力はすでに0.1切って視神経も真っ白中心もとんだというなら、ま、急いできついことやっても仕方ないということやろう、この先はまず濾過手術か毛様体破壊やろねえ、でもあの上司さんは、難しい硝子体手術が多くて緑内障まで手が回らず、緑内障症例は緑内障が売りの眼科専門病院におくってたけど全身状態が悪いと無理だし、どうなるだろうね、と、ふつうに返事。たまたまそこにいた、もと部下のいまの同僚も、ふんふんときいていた。

ところがその後日、今上司は、もと部下を、他院に情報を流すな信用できないと叱りつけたんだそうだ。いまの同僚がチクったとw で、急遽、濾過手術することになったらしい。本当に急遽なのかは知りません。

フェイクありですよもっぺん念のため。現実に似たような症例があってもたまたまです。

部長なんてものはその部局の最高決定権者です。おおよそトップというものは、部下に裏でとやかくいわれるのが半分仕事みたいなもんで、ましてや変なことをやったらあっという間に部下の世代に情報は回る。こっちの部長は白内障術後翌日ループが出てばかりだとか、あっちの部長はきつくて術中患者が泣き出したとか、それは本当だかわからないと、聞く方も心得て聞くものだ。
上司が部下に、言うなといって、それで部下が黙るわけないやろう、次は、まわりにチクりそうな人がいないかみまわしてからいうようになるだけです。そもそも異動したらもうコントロールのしようもない。

みんなが見ている、箸をころばしてもすぐに知られる、という自覚が、立場とともにあったほうがいいんじゃないかとと思ったものであった。いや今回の件に関しては、べつに変なことやってると思ったわけではないが、それだけに神経質さがきわだつ。

医師というのは自分のやってることがどうなのか、いつも気にしているものです。だから、いま悩んでいる症例についての相談というのが、世間話のようにふつうに行われる。下のレベルになるほどそうだ。
患者個人の特定ができるわけじゃなし、いろんな話をきいて自分でまた考えて医師は育つのであるから、うまくいかない症例の情報は囲い込まずにむしろ積極的に交換するべきでしょう。
部下が他院の先生に相談したというなら、「へえ、で、どういってたの?」と訊いてもいいくらいだ、私ならそうする。

思うように治癒しないなんて知られたら沽券にかかわると思ってるのかもしれないが、まともな医者がきけば、そういう困難な症例もあるよね、どんな経過になったか教えてほしい、でおわりの話なのだから。

医師の暴言2015/01/29 20:34

こういうことがあったらしい。

「くそ、死ね」搬送女児のブラジル人父に医師が暴言 ユーチューブ投稿動画にはキレた姿も 静岡 2015.1.28 08:33 産経ニュース

いつまでもこの医師に相手させる体制がそもそもいけません。
それ以上の医療が必要でないと医師が判断した場合には、事務がひきつぐべきで、そういうリスク管理ができてない病院ですね。

私は外来では、ここから先は自分がいても無意味と思うときにはさっさと部屋を出て事務や守衛呼ぶことにしています。
ちゃんとリスク管理できない病院からは結局医師がいなくなり、住民がこまることになるでしょう

言葉遣いが悪いことを動画でクローズアップして叩くのはどうなのかねえ。そこまでの経緯があるわけで。それでちりちり謝罪してどうするのか。
撮影の手際といい、本当か知りませんがなかばクレーマーという話もあります。医師は、ここまでアツくなるのは、まじめな人なんだろうと思う。

ちなみに、そういう威嚇的な相手に対応する部門では、警察OBが雇われることも多いようですが、ヤクザかなんかと同様の方法論を取ることがある。まず相手をおとなしくさせるために、医者に向かって「先生もしっかりしてくださいよ」とか言い出したりするのである。
私はそれされたときには、そのまま事務に怒鳴り込みましたね。

もめたら、喧嘩なんかするなさっさと逃げろと部下にはいってきました。それでもなんかあったらすぐ院長にカチコミいれる気分満々でやったのですが、幸いそういう状況はありません。

部長なんてのは、部下をまもってなんぼであって、システムに問題があるのが明らかなら、トラブルは改善のいいチャンスなのですがねえ。
そこで放置して現場にまかせておけば今回のようなことはいくらでもおこるでしょう。院長に問題をあげにくい雰囲気はないか?

穏便な体制維持」が目的でとりあえず頭下げときゃいい、という感覚の持ち主は珍しくない。下げる頭が自分のじゃなきゃ尚更のことだ。
そういう意識の蔓延した組織はつぶれても自業自得です。

セカンドオピニオンとは2014/12/02 00:38

どうも勘違いしてる人がいるようなので。

セカンドオピニオンというものです。

これは、本来、ある医療機関で診察されて診断受けて、それについて、診療データをもらった上で、別の医療機関で、そのデータの評価が正しいか意見を聞く、というものです。その別の医療機関での診療行為は一切なし、ですから保険医療にはなりません。
うちの病院では、要予約、一件30分5Kでやってると思います。これって、医者をその時間占有するコストとしては結構安いというのは知っておいたほうがいい。

この制度の当初、自分で診察しないと意見なんていえない、といってた先生もおられた。
これがふつうの医者の感覚で、気分はわかる。
あくまでも、診察はいらない保険でなくていいという人のためのもんです。
診察を受ける根拠があって診察検査ありなら当然保険医療になります。

ところで、開業知人にこういうことがあった。

かなり黒っぽいHFA静的視野を振り回す30歳くらいの、目つきのちょっとずれた人がきたそうだ。
他院での視野の検査結果についてききたい、それについてききたいだけだからここでは検査は一切してほしくないという。視力検査も、スリットも眼底もです
顔とそのデータだけみて話せということですね。

彼は、これはセカンドオピニオン相当やなと、当然思いますな。で、言ったそうな。

まったく当院での診察検査なしで、初診で、もってきたデータのみについて話するなら、これは保険診療になりません。ちょっと高くなりますがいいですか。
しかもそれは、視野だけ持ってきて病名すらわからないなら、もってきたデータについて、あーでもないこーでもないというだけで、どこまで実際の役に立つかわかりませんよ。
ある程度の検査までするなら、保険でできるし、きっちり話もできると思いますが、と。

やってきた人は、せめて視野見てどの程度というだけでもできないのか、とか、検査結果をどこかで見てもらえと渡されたのできたんだとか、いろいろいわれたんですと。
気持ちはわかるが、ちょっと医者を便利遣いできると勘違いしすぎ
目の愛護デーにやってる無料相談室じゃないんだから。

その上である。他院で取った検査の評価は、検査内容が豊富でまともならそれでもいいだろう。
しかし、視野だけというような、出所不明の非常に限られたデータを持ち歩いて、お安く見立てをしてくれといったって、そもそも本当に本人のデータなのかすらわからない。
そんな危ない話にはまともな医者は乗らないよ。

繰り返します、日本の公的医療保険では、診療なしデータのみ見るという形では初診患者を保険医療対象にはできません

その人は、結局、そのまま帰っていったそうだ。自費の値段も訊かなかったらしい。
本気で、初診料3割負担0.8Kなにがしのみでやろうとしてたのか。話聞くだけなら無料と思ったのかもしれない。
計算すると、初診料に、視力検査、眼圧、スリット、それに無散瞳でちらっと眼底見て、そのうえでもってきたハンフリー眺めるだけなら、3割負担でも3Kかからないのですが。

治療について一二を争うところで保険がどうのといってられないし、幸い日本ではまだある程度その感覚が通じますが、それはほんとに緊急での話です。
今回はあきらかに本人がなにか医療制度について勘違いしてるとしか思えない。

あとでネットで不評ばら撒かれるんかも知れんな、でも、保険医療の筋は通さざるをえないし、実感として、地雷踏むよりましやろなあと、言っておりました。

マスクや手洗いをする意味2014/11/18 13:14

厚生労働省は、他の人への感染を防ぐため、「咳エチケット」をキーワードとした普及啓発活動を行い、マスクの着用や人混みにおいて咳をする際の注意点について呼びかけることとします。


認識としては正しいんだけど、そもそも飛散させるような発病状態の人は表に出るなというのが抜けてますよw

マスクは、感染(うつ)されることに対する予防策としては、ほとんど意味がないという認識が、日本では一般に共有されてないのですね。

たとえば医療者もマスクしてますけど、医療者のマスクは喋る時に唾液等飛ばないよう、にするのが大きい。処置するときに起こす感染の細菌は結構口腔内のものが多いという。
人間の消化管というのは基本的には「外界」であります。

接触型の感染起こすものには、手洗いや医療用の手袋は重要とは思う。知人によると、手袋していちいち手を洗うようにしてから、明らかに流行性角結膜炎の院内感染が減ったそうだ。それまでも手は洗ってたんだが、汚れが落ちやすいように思うと言ってた。

マスクも手袋も手洗いも、うつされない、ではなく、うつさない、ためのもんで、もっと効果的なのは、隔離、が世界標準ですが、我が国では、ケガレの観念と相まってか、よくわからない発達をしてます。
手洗いは禊ぎ、マスクは結界なんでしょう、日本では

ただ、医療者のマスクに関してはぶっちゃけると、昨日焼肉食ったとか、時にとんでもなくにおう受診者がいるとかいうのもあると思うw
とくに、目医者は顔が近いので、そんなに珍しくない「医療者あるある」と思います。

失われつつある眼科技術(笑2014/11/14 23:32

眼科医向けのネタです。専門用語の解説もしませんw

涙道閉塞の方がこられたのだが、いっしょにいる30歳台の先生が、ブジーやったことないんですという。よくきくと、涙嚢造影したこともないそうだ。
目の前でリピオドール入れて見せ、閉塞してたもので、麻酔の上、森寺ブジー針で通して見せた、ほんとうはこのあと毎日しばらく涙洗したほうがいいのですが学会だの週末だので無理、まあ癒着してしまうならNSチューブいれてみせるからねと若手に言った。
保健衛生がよくなったせいなのかどうなのか、涙道閉塞とか最近見ることが少なくなったような気がする。赤ちゃんのブジーとかも、昔はもっとあったような気がするのだが、若手は、それも経験がないという。ブジーを差し込んだときの hard end の感触とか通すときのプツンとなにか切れる感じとか、知らないままに固まって歳食ってから出来るもんじゃないだろう、どうすんねんろと思ったりする。

むかしは定番だったのに、気がつくと廃れてしまったもの、というのがどんどん出てきて、古い私としては、まあどうしましょう状態なわけですw

別の若手は、 PI したことないんだそうだ。まあ閉塞隅角ものは白内障手術してしまえでいいと思うのだが、とりあえず PI だけでもという状況はありうるし、そういうときにどうするのと訊いたら、ちょっと考えて、硝子体用のカッターでかじるといった。あれ高いんだけどねえ、、、、

DEC のプローブもディスコンだそうだ。で、経強膜の剥離の手術は、最近は、シャンデリアを突っ込んでワイドビューでみながらクライオするらしい。
DECに関しては、これをメインでやってた医局が、双眼倒像鏡つかってなかったのがいけないのである。手術時に、どうしても助手にMS鉤で押してもらわねばならない。熟練者が2人必要な手術なんて廃れるに決まっているではないか。
私は、双眼倒像鏡つかって、自分でMS鉤で押して自分で焼くようにしていた。これは助手の熟練不要で、実にやりやすくてよかったのだが、布教する前にDECそのものがなくなってしまった。

眼内レンズも、折り曲げレンズばかりである。
私は一時期日本でいちばんたくさんアルコンの MZ シリーズの PMMA レンズを使っていたと思う。一般には廃れてしまっていたからそうなったのですが、ともあれ、PMMAは、きれいだ。特に、黄斑手術をするときに、これとHOYAの高屈折低分散の前置レンズの組み合わせは眼が覚めるほどに網膜が美しく見える。長いトンネル掘れば乱視も問題にならないのだが、MZシリーズはすでに廃版になり、近く Nidek の無着色 PMMA レンズも消えるらしい。

トラベクロトミー。私は筋を引っ張って眼を回転させ右手から作業して、右下側部分にあたる部分でやるのが通常である。白内障手術もしたいときは、このときだけは結膜をいちいちあけない角膜切開で折り曲げレンズを入れる。これは眼球を回転させているので結果的にはほぼ右横からになります。手の向きが違うので当然別創。濾過手術の予想される症例の結膜に炎症はなるべく起こしたくない。いまさら上からの同一創でやる人には、緑内障手術そのものをもうちょっときっちり考えろといいたい。
ところが、トラベクトームという代物がでてきた。これ、隅角掻爬とおそらく等価なのだが、内壁のみを切るという技術的根拠がはっきりしているので、やたらそのへんをえぐりとる印象のある隅角掻爬よりもたぶんウケがいい。隅角掻爬でも、ほとんどの場合実際には内壁しか削れてないとは思いますけどね、強膜けっこう頑丈だし。。
ただ、トラベクトームは、機械もプローブもやたら高い。よくわからない研究会に入らされるし怪しいことこの上ない。
しかし、私は以前にトラベクロトミーした方の、もう一方の眼にトラベクトームしたことがあるのだが、感想を聞くと、「そりゃもうぜんぜん楽」といわれた。
この一点で、トラベクトームがそこそこ広がるかもと思いました。
トラベクロトミー、ほんとにコストパフォのいい手術ではあるんですけどね、、、フラップをつくる作業が、なかなかハードル高いんだろう。はじめてやって、きっちりシュレム管出してみせた後期研修医に感心した事はあるが、あくまでもその個人が上手いということにすぎない。
誰でもすぐに出来るような手術が残っていくのでしょうな。

どうやら私の好きな手技手法というものは、一般受けしないようなのである。

小切開硝子体手術にしても、炎症がどうのと最近ではやたら小さくしたがる。手順そのものは 23G でも 25G でも同じなんだから、私は道具の剛性の強い23Gが好きなのだが、どうもメジャーではないらしい。

機械や器具がよくなって、手術も検査も一般レベルでそこそこなんでもできるようになったのはいいことなのだろうとは思います。
むかしなら熟練した手術の神様がやってたようなことが、はじめて数年の若手に可能になった。

ただ、「針と糸」を触らなくなって、手が動かない人が増えたのは、困ったもんやなあと、思うのです。針糸がでるとやたら時間のかかること。斜視の手術なんてみてられないw
外科手術の基本と思うのですが、自分でそれを使うように心がけないと出来るようにはならない。

こうして、前ならそんなに珍しくなかった手術なのに「この手術どこでやってもらえるんでしょう」という難民が生まれるようになるのだろうと思う。私の眼にはPMMA眼内レンズを入れてほしいのですが、そのころそれのできる眼科医いるんだろうか、、、

香港の眼科検診2014/10/27 23:05

つづけて眼科の話。
これも開業医知人から聞いた話です、フェイクあり。

香港で眼科検診受けて治療中なんだが一時帰国中なのでみてくれという、ややお歳の方が、その知人のところに来られたという。
診療情報を何枚ももってこられ、視神経乳頭やNFL解析のOCTまである。緑内障疑いで、検診のあとクリニックで何度も見られたというのだが、本人にいわせると、加えて、レーザー治療を受けたという。
レーザーについては何も書いてない。緑内障にしても、検診で視神経がおかしいんじゃないかといわれたそうで診療情報には glaucoma suspect と書いてあるのですが、眼底鏡で見てどうもそうはみえないし、 もらったOCTでもそういう数値は出ていない。前房ちょっと浅目ではあるが隅角は十分に開いている。
眼底を見ると、片眼周辺部網膜に、こまかい硝子体牽引があって、ごくちいさく網膜一部が立ち上がっている。そのまわりに半端にレーザーの痕がある。
レーザーは2回やったが、出にくいのでまたやるといわれたそうだ。高かったでしょうというと、はあ、といわれたと。

緑内障については、どうみてもそうはみえないが念のためと、再度OCT、こんどはGCCの上下差解析もした。これもとくに緑内障っぽい異常はない。HFAしたがなにもなし、希望でその後数回受診してもらって眼圧を測っても上昇なし、いったいどこをどうして緑内障がでてきたのか不明と。まさかそれで稼いでんじゃなかろうね、といっていた、私にはわかりませんが。

レーザーは、炎症が起こるのがいやなのでゆるいのをちょっとづつやる方式なのかもしれない。そもそもレーザーが必要だったかどうかも不明だが、もう入っているし、ご本人が、きっちりレーザー仕上げてくださいというので、通常のパワー(200μm200msec150mWからあげていく)でとんとんとあやしいところのまわりを焼いて終了。

一症例で判断するわけにはいかんし後医の名医になるのもどうかとは思うが、香港てこんなもんやろか、とゆうておりました。

ついでに、眼が乾くとかいう話になって、ドライアイの検査を少ししたうえで、毎月日本に帰るからとりにこれますというので点眼処方もしたという。
日本の医療はお安くて至れり尽くせりと笑っておりました。


うちの病院では、ドライアイ治療薬はどっちもw採用してませんけどねw
ドライアイで総合病院に通うのはちょっと違うと思うので。あれは不定愁訴に近いもので、いわゆるホームドクターが窓口になるべきものです。
なもので、地域の開業医の先生にも、そちらでお願いしますとあらかじめ申し上げております。

EKC 流行性角結膜炎の生徒2014/10/25 16:38

えらそうな話が続いてしまった。田舎目医者として身の程を知った話に戻します。

知人から聞いたのですが、こういうことがあったそうな。フェイクあります。

高校生が目を真っ赤にして受診、念のためウイルスチェックしたらきっちり陽性で、アデノウイルスによる結膜炎だから学校にはいくなと申し渡すと、成績が悪く単位もないのでいかないと退学になるという。
そういう問題ではなく、これはもう法律で決まった伝染病対策なんだからそもそも行ってはいけない、これに関する欠席は公休になる、といって帰したら、次の日ご母堂と一緒にやってきた。
学校指定の診断書をもってきたはいいが、4日後までになおして試験を受けろと担任にいわれた、保健教諭はなにもいわない、という。
なんつーアホの担任やろうと思った彼は、その診断書に、欠席予定を発症後2週間いっぱいとってかつその下に、予定も不確定で登校前に確認を要すと明記、さらに、下の方に、欠席は公衆衛生上の理由で学校保健のためである、欠席により学業上の不利益をこうむることがないよう担当教員保健教員校長にお願いします、と書き添えたんですと。

学校にそんなにEKCをはやらせたいのか、はたまたきっちり隔離感染防御してこの高校生にだけ授業や試験が出来るのか。
それにくらべたら出席停止して、登校できるようになったらこの子にだけ追加でなにかするほうがはるかにコストはすくないのだが、わかってんのかねえ。
彼のぼやくこと。

ちなみにその数日後今度はこの高校生の弟中学生が目を真っ赤にしてやってきたという。
ウイルスチェックする気にもならず、学校は休めと言い渡すと、数日後にクラブの大会があって出るのだそうだ。うじゃうじゃ厨房のいる更衣室なんてどうかんがえても高濃度の伝染現場にしかならないのでそれも駄目というと、非常に怒りに満ちた赤い目で睨む。ご母堂に、そういう状態でみんなのいるところにいったらアカンといわれたと、とにかく顧問にいえ、といって帰したそうな。
ご母堂がなかなかまともで、怒り狂う息子をねじふせて休ませたそうです。これはむしろ上出来。

高校生君の方は、診断書よりはやめに症状おさまったが、担任のほうが、今度は、はやめに学校にくるならあらためて一筆入れろといったそうで、何に書くか面倒だったそうだ。学校の書類に追加で書くならともかく、医者の方で発行するなら、たとえペラ紙の走り書きでも書類代は当然とるべきもんですからね。

きけば、市内複数箇所ですでに EKC の火の手があがってはいたとのこと、この人たちのせいではじまったというわけではないのだろうが、あちこちに感染症を理解してない人たちがいれば、そらもう、どうしようもなくなりそうですな。
感染した人より、むしろ周りの無理解で、拡がるのでしょう。

心配にも程2014/07/25 20:38

日本はいい国で、殴られた怪我でも、公的保険で治療できる。本来殴った奴が支払うべき内容のものだが、「第3者行為による」と注記をつけてレセプトを通すそうな。通るんかい。
自殺未遂の切り傷だって、なんとなく、保険で治療されていることが多いだろう。

眼科で、これはもう患者の自業自得で、いちいち医者にあれこれいうのは勘弁してほしい、というのは、コンタクト関係と、エクステやアイプチによる炎症でしょうね。
もっぱら開業医の領分になる。

知人から聞いた話。

1か月前に睫毛エクステをつけたが、最近外れて目に入るのか、しょっちゅう目がコロコロして赤くなるという。今は自覚症状はないが大丈夫かと、若い女性。
いま症状がないならやることはないが、そんなに赤くなるならエクステとったほうがいいでしょうねえ、と、まあ当たり前のことを言ったら、エクステはとる気はないが、何度も炎症になったらいけないかと心配で来たと。
心配なら原因を除くしかないですよと、これはもうかみ合っていないのだが医者としてはいうしかないですが、女性は、なんでそんなことをいわれなければいけないのかという感じで、子供のころ診てもらった先生が(先代のことね)いなくて残念です、とまでいいだした。
そりゃ申し訳ないですねと、まあ軽い炎症症状はないではないので、ごく軽い抗炎症剤を出して帰ってもらったそうな。
やりたいようにやりたいが心配はケアしろ、と、いったいどこの王様なのかとぼやいておりました。

あと、自業自得ではないが、不定愁訴の対応もつらいもの。

そこは、ちょっと遅くまでやってるのであるが、おわりしに高校生女子連れた神経質そうなママがやってきたそうな。
ごくたまに女子の目がかすむという、受験生なので心配、ほかの医院でみてもらってなにもなく、ドライアイじゃないかと人工涙液をもらった。それがなくなったのだが、時間が遅くてそこがもう受付終了後なのでネットで調べてきた、人工涙液を出せという。
本人に、人工涙液で症状はよくなっているのか訊くと「わからない」。
そのレベルでつかってる点眼なら、調剤薬局においてる人工涙液で十分ですよと、むしろその方が楽になるからいいだろうと思って言ったらすごい剣幕で「出してくれないのか?」といいだした。
けっきょく診察の上、ドライアイの所見もなく、軽い内反睫毛で角膜びらんがあり、軽度のアレルギー所見もあるのでそのように点眼出したうえ、人工涙液については調剤薬局で買えるよう名前書いて渡したそうな。
そんなもん1日切れたってなにがおこるわけもなし、前の先生も「仕方ないからとりあえず」出してただけでしょう。心配なら大学紹介しましょうかと言いたくなったそうです。

どっちも、「もう来ないだろうなあ」とゆうとりました。
さすがに最近の中規模以上の病院は初診バリアができているので、こういう方々はめったにおいでになりません。

安心というのはまずは本人の気の持ちようで、医者はそれを喜んでサポートはするが、自分の思い通りにしてその上で安心も欲しいというのは、すくなくともインフラ医療においては無理です。
また、医者は自分の所見しか基本的には信用しないので、他院が閉まってるので別院にかかった場合は、自動的に同じ治療方針になるとは思わないでほしい。