医師異動時のマタハラ2017/07/26 09:04

大阪の医療センターで、勤務予定きまったあとに妊娠した女医に対して、採用先の女性診療科長がいまどきいろいろおっしゃったらしい。

朝日新聞(朝鮮日報ではない)
採用予定の医師にマタハラ 大阪の医療センター部長
太田成美2017年7月25日01時06分
「センターが小児科の女性部長を厳重注意としていたことがわかった。」「女性医師は昨年末ごろに採用が内定し、今年4月から勤務予定だった。今年2月、妊娠がわかったと、部長にメールで伝えると、部長は「病院に全く貢献なく、産休・育休というのは周りのモチベーションを落とすので、管理者としては困っている」と記し、「マタハラになるかもしれない」としつつ、「非常勤で働くのはどうでしょうか」と送り返したという。」

ここに書かれた以上の状況も知らず、医師における一般論だけで書きます。

こういう話はぜんぜん珍しくなくて、「私は頑張ってきたんだからおまえもぎりぎりまで産休なんかとるな」と後進女医さんを蹴り上げる上司女医さんの話はよく耳にします。とある女医さんからは「女医の敵は女医」というセリフもききました

ただ、勤めていて妊娠したというならともかく、ほぼ半年後の採用がきまってから妊娠がわかって勤務開始でいきなり産休-育休となると、たぶん、医療関係ではむしろこの女性科長に同情的な向きが多いでしょう
感情移入して、中小工場で人手カツカツのばあいこんなことが通っちゃこまるというひとがいてもおかしくはない。しかしそういう工場は面接採用即勤務です。半年先なんて悠長なことは言わない。
そして、半年もあれば人間妊娠くらいします

勝手なきめつけかもしれんが妊娠年齢ですから、若手からせいぜい中堅。そういう時期の医師の異動については、おおくの場合大学医局のひも付きと思います。半年前にきまってるあたり、後期研修おわったか院をでるかのタイミングじゃないかと思わせる。
大阪医療センターは、単一医局ではなかったと思いますが、ほとんどの医師にひもはたぶんついてるでしょう、すくなくとも入ってくるに際しては。

そういう状況で大学から持ってこられた人事ってのは、診療科長にしてみたら、自分で決めたわけじゃない。で、仕事がたくさんあるのにさっさと産休なんてどうしてくれようという気分になるのはわからなくはない
まあ、病院の独自採用ということもあるかもしれんけど、なににしても、大学医局が派遣先として確保するに値する、この手の病院での診療科長の、人事異動に関する発言権なんて、まず、なきに等しいものです。

ここで科長が、自分でできることは以下です。
1) のこった人間で、一人減をカバーするように体制をつくる。
2) 人事きめてる大学医局か病院事務に、もうひとり確保させる。

1)は全体の仕事量をかえないにしてもそれを減らすようするにしてもなかなか大変ですが、だったら、2)をちゃんとやったのかというのが報道ではわからない。

ただ、Eメールのやりとりからみて、どうもそういう文脈ではなく、話をきいてお前がくると困るから、と本人にまず直接やってしまったのではないかと想像します。

大学医局人事の一環の人事異動で、くる予定の女医が産休予定なのは、むしろ診療科長としてはなんとでもいいように利用できる状況と思うのですがねえ。
独自の人事なら院内事務がからんでるだろうからそっち、あえていえば院長レベルまでケツもっていけるし。
医師もう一人もってきてくれ、無理なら楽になれるよう外来減らすなり当直減らすなり院内システムをいじってくれ、受け入れ患者数が減るのはむしろ当然だ、残った医師に負担がふえないように支援システムをつくれと、胸を張って主張できるではないですか。
営利企業のトップだとそういうわけにいかんが、公共インフラの中間管理職ですからねえw

育休取得は就職後一年目以降可能で、それまでの場合は非常勤になると規則になってることも多いとかとか。一般病院もたいがいそのようです。大阪医療センターというと、みなし公務員で相当手篤いでしょうから実際にどうか知りませんけどね。
厚労省も、このように↓ 出してる。

2 以下の要件に該当する場合は育児休業を取得できません、.
(対象外とする労使協定がある場合に限る
雇用された期間が1年未満
②1年以内に雇用関係が終了する
③週の所定労働日数が2日以下

だから、この科長の考えたことは、実は社会のシステム上そんなにずれているわけではない、問題は、それが事前にちゃんと明文化された規則としてあるか、それをどのように説明するか、だけです。

この科長も自分でなんとかしようとせず規則にのっとるか、規則がないんだったら、上に書いたように、実際に人事決めてきた大学か病院事務や上層部に増員対策を放り出して、何ともならなきゃ業務量減らせばよかったのに、と、いちおう診療科長(いわゆる責任部長)をやったことのあるものとしては、思います。
なんせ雇われ管理職、筋を通して開き直ればけっこうコワイものがないのですよ。

中間管理職が上とか体制とかを忖度して頼まれてもないのに下を踏むなんてよくある、状況も知らずに書いてますが。
そういう忖度を、「責任感」と呼んで賞揚してきた文化ですから、この診療科長のやったことはどこにでもあるし、私もあなたもどっかでやってる

ところでこの話は、とうの女性診療科長にも病院長にもありがたくない形で終わってしまった。

「センターは、部長のメールの内容は、男女雇用機会均等法で防がなければならないと定める妊娠、出産などを理由に不利益な扱いを示唆する言動で、いわゆるマタハラだったと認定。部長を厳重注意、監督責任のある病院長を所属長注意とした。女性医師はセンターで勤務しなかったという。」

いらんこというから悪い」という扱いですかね、これは。
別の医師が定員充当したのか、けっきょく欠員のままいくのか、診療科長の扱いが今後どうなってしまうのか、もうわかることはないでしょうが、なににしても、自分に決定権のないことは、その場でなんとかしようとせず、さっさとどっかにもっていくのが安全という組織人の知恵を周囲の人たちは再認識したことでしょう。
なんとかしたら大栄転が待つような内容でもないんで。

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