日本の医療DXの現状 ― 2024/10/06 21:38
各種データとともにデジタル化された様々な業務を端末システムから行うことが可能になりつつあって、これらの動きはデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれる。
保険医療行政におけるDXの推進の目的は、主に国民の医療サービスの質向上や効率化、持続可能な医療制度の確保であるとされているわけです。
その目的に沿う限りDXについて異論をはさむ気はない。
しかし、、、現状でのDXは、各種手続きを自前の端末で行える、という程度にとどまっている。
賛否はあろうが、療養の給付に関して、クラウドにまともな電子カルテシステムが共有され医療行為が保険点数に自動的に紐付けされて即時に窓口負担分まで計算されそれを通せば返戻も減点もないシステムが保険者から無償で供与されるならほとんどの医療者はDXに肯定的になるだろう。匿名化された個人データの共有も統計処理をまともにできるなら医療の有効性の向上に有用であろうから猶更である。
これはほとんど皮肉で書いている。「まーできるわけないよね」
すでに労働人口減少社会となった日本では、すべての局面において不要なコストの軽減は重要。
各種許認可や手続きにかかる時間も手間もコストです。
すべて不要なものとは無論いわないが、その手の規制の中で仕事するのは、手足に重りをつけて動くようなものです。当然ながら生産性は落ちる。
現状のDXは、現場の手間を省き生産性をあげるという方向には向かっていない。
むしろ行政はいろいろな手間をネットやデジタル化を通して現場ユーザーに放り投げつつあります。ユーザー側はそのつど端末に向かわねばならない。手間をユーザーに丸投げできるようになった上は、規制を増やすことに行政側が躊躇する理由はないわけで、実際、今回の保険改訂でも、療養給付にかかわるとは言えないベースアップ評価料や煩雑な管理料などの手続きが現場に降りかかってきた。
しかも各部局がそれぞれ行うものだから、おなじ厚労省でも担当部署が違うとこちらに割り当てられるIDが違うなど、いい加減なことがおこっている。問い合わせてもたらいまわしになってまともに返事も来ない。うちのG-MISのIDはいまだにわからないままですわ。
管理する側からすれば、いろんな枠組みが細かく厳格に区切られ、乗り越えるたびに情報が残るほうがやりやすいに決まっている。行政はすべからく規制を増やしたいという本能を持つのです。
いっぽう管理される側にすれば、手間が多いものに近づくのはなるべく避けたいのは当然。規制の多い分野は参入者が減って、その分野自体が成り立たなくなっていく。
平成21年教員免許更新制度が導入されさまざまな手続きが教員に降りかかり、雇用レベルが維持困難になってけっきょく更新制度は令和4年に廃止された。
盛りだくさんなかかりつけ医制度の構想を見るにつけても、医療行政においてその二の舞が演じられつつないか。
かって米国のトランプ大統領は、ひとつの規制をつくるときは2つの規制を廃止するべきというルールを提唱した。トランプ大統領の実際の政策についてはともかく、DXの推進に当たっては、日本の今後に必要な分野であるほど、それを規制強化の手段にしてしまわない歯止めがいる。
今の日本にその動きがあまり見られないことを憂慮するべきと思うが、憂慮したってねえ。
こないだの総裁選でも社会保障についてはほとんど争点にならなかった。あれ、もうどうしようもなくて争点にしようがなかったんでないかい、となれば、財務省厚労省の路線でここからも続くんだろうね。
by 稲亀石 [医療] [社会] [コメント(0)|トラックバック(0)]
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://inakameishi.asablo.jp/blog/2024/10/06/9722289/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。