iPS細胞使用眼科手術の合併症2018/01/22 11:37

iPS細胞移植の眼科手術後に「網膜が腫れた」そうです。
「手術法の改良必要」 山中氏、iPS合併症問題     2018/1/18 18:22
「他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜の細胞を、目に重い病気のある患者に移植した世界初の臨床研究で網膜がむくむ合併症が起きた問題について、京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は18日、大阪市内での講演で「副作用が起こってしまった。手術に伴う合併症や手術法の改良がまだまだ必要だと学んだ」と述べた」

これ、「むくみ」は結果的におこるもので、要は、続発性に黄斑前膜ができました、ということらしい。
移植した iPS細胞が漏れて、ということかもしれないというわけです。
しかし、炎症細胞が付着すれば、iPS関係なしにおこります。

つまり、硝子体手術後の gliosis であれば、ふつうにどんな症例でも発生しうるのですね。
そんなもんいちいちなんで、と思いましたが、再手術は重篤事例の定義に入るし、重篤事例がおこったらすぐ発表しろとマスメディアとの取決めになってたそうです。

全症例終了して1年してからまとめて発表したいと病院側は考えてたそうですが、メディアがそれではいけないとねじこんだそうな。
はじめて行われることに、あからさまな事故ならともかく、通常手術でおこる程度のことをいちいち発表させるのはどうかと思う。

前膜はサンプル回収がなかなか難しい、すぐへばりつきますからね。
量がすくなくて PCR もかけられなかったそうで、細胞の由来がわからない

その状況でも、記者会見するとなると、なんかいわねばいかんので、「手術法に問題があったかも」という、日本人に珍しくない自責的な発想を前提として「改良がいる」との一連の発言につながったのだろうが、山中先生は眼科手術の素人です。山中先生も手術について説明は受けたかもしれませんが、手術担当医のK部長がメディア対応すればいい話で、山中先生にここでコメントさせるのがすでにおかしい
(注意:報道されたようなことを本当にいわれたということを前提に書いています。実際、その後の、iPS細胞の眼科応用担当の高橋先生のコメントでは、手術の改良だのに力点を置いては報道されていない、もともと臨床眼科医ですからね。)

改良といっても合併症のない手術はないのですよ。

応報論とか、公正世界仮設とか最近いうらしいが、「なにか悪いことがおこった」「それはなにかもとにまずいことがあったから」「対処すれば悪いことは防げる」と、なににでも適用するのはいいかげんやめませんかね。
これが、事故事件のたびに被害者をまずぶっ叩くものの考え方の基本です。風の音に耳を澄ませればという有名なたわごともある。
「金枝篇」に語られた古代的な呪術をいつまで引きずるのか。

あまり「改良改良」といって、なんにでも対策方法はあるという幻想を振りまかないでほしいと思った。いや、つねに改良を考えるのは技術者として正しいが、現状の最高水準の手術でも起こりうることです、という開き直りがまずほしい。
この件について山中先生がメディアの相手する筋はさらさらないが、相手するにしても、おかしなことはやってないと、胸を張ってください。

iPS細胞の手術でこんなことがおこった、手術方法を考えんとあかんから予算もっとよこせ、じゃないとは思うので。いや、ほんとうに iPS細胞が漏れて ERM になったというならそれはそれで論文が書ける。これは余分な感想。

コメント

_ 患者A ― 2018/01/27 08:23

はじめまして。
黄斑前膜って、誰でも出来て(自分もちょっとある)、失明までいくことないって思ってました。
こういうことで、山中先生に余計なプレッシャー与えないでほしいです。
自分は緑内障患者で、強度近視もある。緑内障には応用無理でも、いつ他の眼病になるかわからないから、iPSには期待してる。
改良だったら、レクトミーのろかほう感染を防ぐための改良、術式開発をしてほしい。
・・緑内障患者の愚痴です、相談じゃないです、笑。
失礼いたしました。

_ 稲亀石 ― 2018/01/27 18:03

眼科医ですね(笑 どうかご自身も頑張ってくださいまし。

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