10連休の医療機関2019/03/03 23:46

天皇代替わり前後のGW10連休ですが、医療機関はみんなどうするつもりなのかと、医師会も、医会もけっこう気にしている模様。その期間の医療機関の休診一覧表をつくる動きも例年より早いようです。
休日急病診療所の担当医が埋められるかどうかもわからないという。

で、その10連休の間に、地域医療のためとがんばって医院を開けても、とくになんの加算もありまへんと厚労省はいってたのですね。
休日も時間外もつけないと。
診療中という札がかかったらもうそれは、休日だろうが夜中だろうが、通常の診療である、というのは彼らの姿勢です。時間内に「これからいく」と連絡して、受付時間後に来た患者ですらも、時間外じゃないといっている。

最近やっといいだしたのは、届け出とちがう診療時間にしてもこういう時期で理由があればとくに問題にはしないよ、程度。
どこまでも内部の整合性を問題にしている。
まことにお役所。

10連休は長い、が、それにしても、そのあいだに医院をあけたところで、患者数は少ないでしょう。
いまどきの医院は、なかなかひとりでできるものではない。減数してでも、従業員ナースには来てもらわないといけない。
正月の百貨店とおなじ話ですね、働く人にとってもそこは休日の筈。だから、出てきてもらおうとすればせめて割り増しで給与くらい出さないとねえ、ということになる。
余計あける気にならなくなる。
頑張るのはもう疲れたよパトラッシュ、と10日連続で休診する一般医療機関は多いでしょうが、、、、
ここに至って、愛媛は休日加算を認め、京都も認める方向で動き始めたそうです。

問題は、非救急症例に、加算を認めてくれるか
認めて当たり前やろといわれそうですが、支払基金にしても国保にしても、理屈があればけずる姿勢が、オンライン請求で突合点検も縦覧もできるようになって、ほんとに目立つように思います。

初期救急対応医療機関としての扱いで加算がもらえる、という説明のように思う。
とすれば、通常の再診とか、緊急性のない初診なんかは、休日加算つけても蹴り返してくると予想しますが、どうかな

すみませんうちは10連休です。

薬剤情報の共有考2019/03/09 12:47

お薬手帳が面倒、そんなもんオンラインでなんとかしろ、システムができないのは業界の圧力ガー、という方がたまにいるようだ。

電子カルテを共有したらいいのにそうさせないのは医師会のせいとか、薬局同士が情報共有できないのはけしからんとかいう。

よその医院で出た薬が知りたいのは医者も一緒です。
まえにおなじ症状になった時、たとえば花粉症なんかもそうですが、効いた薬効かなかった薬、あわなくてトラブルのおこった薬がわかったら格段にやりやすい。もっと重篤な疾患ならなおさらです。

で、患者側があれこれするのは面倒だから医療者側でなんとかしろ、というのはわからなくはないが、まずは薬剤情報のいまの状況について知っていただきたい。

処方した薬に関しては、当然カルテに記載される。
患者情報の電子化は、現状では医療に関しては、必須になっていません。
電子カルテは、複数の医師がいたら情報共有に便利ですが、以前からの紙カルテがある場合、ひとりでやってる診療所では、電子化するメリットがまずない。
システム導入に手間も金もかかる。停電じゃダメ、マシン立ち上げないと目の前の患者のデータがでてこないのは、私自身は嫌なので、カルテの一律電子化強制とかいわれると反対するしかない

そもそも、カルテの共有は、いつでも支払基金がチェックに入れるという点で厚労省の大好きな方向性ですが、それだけに医療者側としては抵抗が大きいでしょう、人間の作るカルテです。なんとでも細かい突込み入れられますからね。医療費削減の材料にしか使われなさそうです。
癌精神疾患性病ありとあらゆる医療データ流出のリスクを意味するわけで、究極の個人情報的なものについて、そこまで「電子政府」が信頼できるのか。

電子化が、高齢医師の医院じゃなきゃ強制化されてるのは、レセコン、電子請求のためのレセプトコンピュータシステムです。これに入力したうえで、処方箋を発行、もしくは院内で処方することになる。

レセコンデータは、そのまま支払基金にいきますが、レセコンのデータはその医療機関の請求分です。つまり、院内処方なら処方内容はレセプトにあがってくるが、院外処方の場合、処方箋料が出るだけなわけです。だって薬剤代は医療機関の請求じゃないからね。

逆に言うと、薬局のデータをつないだところで、院外処方のデータしか集まらないのです。

まとめます。
薬局が横につながったって院外処方しかつかめない。医療機関のレセプトには院内処方分しかあがりません。
カルテからしか全処方はつかめませんがこれを全部電子化共有は無理です。
まとめて知るなら、国保や支払基金など、保険料支払の側のデータを共有するしかないです。現状では、医療機関や薬局ではどうしようもないわけですが、それだって一団体ではない。

システムの統合運用は日本人は極めて下手な分野です。マイナンバーも活用できてない
薬剤情報の共有のために複数のシステムが予算組む?強力に主導するものがなければそんなものできるわけがない。
各団体はそうする理由がないし厚労省がするとすれば、薬剤情報共有だけのために動くわけがない。厚労省に都合のいいたわごとを言い始めるのは目に見えている。著作権についての文化庁をみればいい。あれが役人です
医師団体も薬剤師団体も、それは嫌がる罠。
さらにいうと、自費診療分はどうするのよ。保険医療は医療のすべてではない

保険証番号なりマイナンバーなり紐付けた薬剤情報のでてくる端末を、誰でも操作できる状況にしていいのかということにもなる。
現実問題として、個人の認証が必要になるでしょう。これがまた手がかかりそうだ。

クラウド状態にした保険医療上の薬剤情報を引っ張ってくるくらいなら、、保険証にICチップで薬剤情報入れ込む方がまだ現実味もあるかもしれませんが、そのためには保険証にそういうデータを書き込む端末を全医療機関に揃えんといかんわけです。
そもそも保険証ってけっこう切り替えがあるんですが、そのたんびにどうするんだろう。だからマイナンバーとの連携ですら危ないと思っているのですが。

こうやってできない理由を並べるのも実に役人的と思うのですが、つまり、それらをぶちかまして行うには、とてつもない政治的な力がいるわけですね。

だったらお薬手帳のほうが、手間もコストはかからないという気分になってくる。
余分な出力系の必要ない紙印刷データは、場所を選ばないので強いのです。
患者個人が持てばデータも流出しない。

個人のデータを社会の医療システム全体で管理できるシステムは便利でいいでしょうし、いままで公的保険システムがないところでいちからつくっていくなら一気になんとかできるかもしれない
韓国が割とそうなので、いまどきはむしろ日本から韓国に、医療システム関係者がしょっちゅう視察に行くようです。

ですが、古い遺産が何とか動いている国では、なかなか切り替わらない。ファックスだって日本じゃ健在なんですからね。

で、いちいちお薬手帳が面倒という向きが、たしかにひとつ余分にものを持つのは、いろんなサービスカードをお店ごとに持たされる感じで嫌なのはわかる。

ただ、いまどきはみんなスマホ持ってるんですね。
お薬管理アプリなんかもあるし、処方箋を写真に撮っといてくれるだけでもよほど助かります

実現しそうもない「薬剤情報共有システム」についてあれこれいうのは結構ですが、いっぽうで現実に対応して、自分でスマホ使って、薬剤の記録をしてくださいませんでしょうか。

とまあまとめてみましたが、、、

じつのところでいうと、医療や介護情報の一元化関する動きを厚労省は見せている

以下に資料があります。
第117回社会保障審議会医療保険部会 平成31年1月17日(木)
PDF 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)について(PDF:1,021KB) 

医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」というものがありまして、来年4月施行を念頭に(おいw)、保険者間で被保険者の情報をオンライン資格確認できるようにして一元管理しろだとか、電カル普及に基金作れとか、医療保険と介護保険のデータベースを連結しろとか、高齢者の保健事業と介護事業を一体化して住民主体の護予防システムを地方自治体主導で作れとか、公的保険の資格管理を厳格にしろとか、支払機関の権限を集中させて機能を強化しろ、とかいってる。
役人はとにかく権限をもちたいというのがよくわかる内容になっています。
ここまでやっても、医療機関や薬局での、薬剤情報の共有は、更にその先になるんじゃないかと予想

わかる部分はあるんですがね、そこを口実に、好きなようにしてやろうという感じ。
要注意です。