科学論文のイントロ、とは2014/03/12 09:21

STAP細胞問題の小保方博士の学位論文で、イントロ部分のコピペが問題と騒ぐ報道もある。
科学論文という代物について、よくわかってない人が読めば、盗作だの剽窃だの言いだしそうだ。。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140312/trd14031200550000-n1.htm
小保方氏の博士論文 20ページが米NIHサイトとほぼ同じ
2014.3.12 00:54 MSN-sankei
「博士論文は、骨髄から採取した細胞がさまざまな細胞に変化できることなどを示したもので、平成23年2月に発行された。約100ページの論文のうち、冒頭の26ページを割いて幹細胞研究の意義や背景を説明しているが、うち20ページはNIHの「幹細胞の基礎」というサイトとほぼ同じ記述だった。」


まず説明しておくと、科学論文というのは、すくなくとも医学系で私が知る限りは、基本的には、序文 (introduction) - 方法 (material&method) - 結果 (result) - 考按 (discussion) の流れで展開する。
以下、部分的に用語がいったりきたりしますがごめん。

科学論文は創作を競うわけじゃなく過去の積み重ねからの新しい一歩を記すものなので、特に自身の積み重ねのない若手の場合、どうしても先人の論文を引き写すことがおこる。
すべての文章が今までない文章にできるわけないのであるから、部分的なコピペのレベルで騒ぎ始めるとどうしようもないような気はする。
まあ、たいがいはセンテンス単位で、単語を替える程度の手間はむしろ楽しんでやるのであるが。

イントロ(序文)なんてものは、その論文そのものの世界観の説明で、その仕事を行った理由だの、いままでの流れだのをとうとうと説いて自分の仕事を正当化するわけね。
なので、おなじ方面の仕事なら引用文献は当然重複しまくるわけです。
出版目的じゃない博士論文のそれが NIH の概説(そりゃよくできてるでしょう)と、かなりの部分まで一致したって、仕方ないと強弁できなくはないし、致命的な欠陥とまではいえないとは思うのである。

論文の価値は、正確なデータ、新しい結果、それらをつなぐ美しい(たまに強引なこともw)ロジックにこそある。
今回の騒ぎで問題にすべきところはデータの部分であって、ほかは本質ではない。

そりゃ、イントロ26ページ中20ページのまるごとコピペというのなら、さすがにやりすぎ、ではある。
「恥ずかしいなあ」という感覚がふつうはあるだろう。
まともな指導教員が、わかってたら、「まんま、コピペでもってくんなよ」とどやすでしょう。論文を全部読んでることは前提。
でもね、そういう手抜きする研究者のデータが信用できるんかいという突込みするひともいるだろうが、状況証拠でしかない。
イントロに精魂込めて、本体がしょぼかったらどうしようもないんだし。

早い話、データがちゃんとしてて筋が通って結果がとてつもなく新しければ、のこりの大部分が引き写しでもノーベル賞とってもいいと思うのである。いやまあ実際そんなことないだろうけどね。
だから、繰り返すが、この件は、まともな研究者なら、データが実はあやふや、の部分で、出直しといで、となって話は終わる。イントロの大量コピペは、攻撃する場所ではなく、軽蔑する部分でしかない。

データの正確性は前提ですから、ロジックを検討し結果の軽重を量る査読時そこは問題にならない。データ改ざんで時々騒ぎが起こるが、そこは査読の責任じゃない。
考按は推論をならべて方向性を示すもんだから、少々夢でもかまわない。読んでいても書いていても一番面白いところですが、まじめにうけると馬鹿を見ることもある。
余談ですが、その考按にだらだら変なケチつける日本語論文査読者が増えてるように思う。

ま、その程度の話のはずですが。

倫理なんてのは、自律のためのもんです。ふりかざしてわめくのはやめてほしい。
あと、生物系の論文のことを知らない文系の先生がわけもわからないのにこういうところで参入しないことです。馬鹿にしか見えない。




ついでに。
ジャイアンが好き勝手してりゃこうもなるだろうという人がいたんだが、なんのことだかよくわからない。

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