想像力の限界2012/09/16 01:30

あたりまえだが人間の想像力には限界がある。
そのへんをぼやかしてこの世でいろいろ文章が書かれているが、米原万里「魔女の1ダース」で、さすがにこれはというものがあった。

旧ソ連の宇宙船に、男子の小便用のノズルがあって、そこに差し込むペニスのサイズを乗船前に自己申告する。その自己申告サイズがたいがい実際より大きいと、オトコの自意識を面白がる文章であったのだが。
実感のない女性もいるんだろうけど、ペニスはサイズが変わる。コントロールできずにいきなりでかくなることはいくらでもある。小便したいのにでかい状態でノズルに入らずぶちまけるのは嫌だから、普通の男ならでかめに申告するのはまったくおかしくない。ましてや宇宙なんだしどんな膨らみ方するかわからんではないか。

このひとは、高校時に「三銃士」でダルタニヤンがミレディの恥骨にのせられてどけられるシーンを読んで面白がる人なのだが、そんな女性でもわからんのかねえ、と思わせる。わかってたのかもしれんけどだったらもっと書きようがあるだろう。亡くなった方だが勿体ないとは思う。

「打ちのめされるようなすごい本」では、カタい会合の雑談に出たバター犬の話をうれしそうに書いたりもしている。バター犬が出ただけで、そしてそれを自分がわかっただけでうれしいのである。無邪気といえば無邪気。
この人に限らず、自分の分野では脱線も含めてまともなのに、ちょっとはずれたところで「こんなものも書けるのよ」とばかりに書くことが、迂闊に得意そうでイタイことはよくある。ご用心である。
当然ですが、私自身が用心すべき自分の文章のいいかげんさ雑さは棚に上げます。売り物でもないしね。