感想 映画「この世界の片隅に」2017/03/23 23:30

機内でみたもので、映画を見たと胸張れないですが書く。ネタバレします。

英語題は In this corner of the world. らしい。世界のこの片隅に、やね。

戦中もの広島ネタで、すみませんが今更感があって、素材としてはなんだかです。
ほとんどなかったけど街中シーンでもっと群衆が動いたらいいのにとは思った。お金かかるからなあ。
これは個人的な好みなので先に書く。

冒頭、キリスト教会音楽に続いて、作品世界よりずっと後年のフォーククルセイダーズの「悲しくてやりきれない」をうたう能年玲奈、のんの声がかすれて流れる。この声が通奏低音のようにずっと頭に残る。
まずは主人公の声を演じる、能年玲奈が本当によかった。この人は方言ものがええんやろうか。

本編の抑えた感じの色のなかで、主人公すずが、はじめに同級生のために描く水彩の海があざやかに動き、彼女の絵は状況とともに線画のようになっていく、ついに右手は失われ、でも、失われた右手は、その後も画面の中で絵を描き続ける。丁寧な作画で、アニメ作家性のつよいものではなく、職人技に徹しています。アニメでしかできないことをアニメでちゃんとやっているのがよいです

原作が強い
でてくるのは「逝きし世の面影」にあらわれるような、枠組みの中に生きることをよしとするひとびと。流れに流されるわけではなく、そういう生き方なわけです。宮崎の「風立ちぬ」の主要登場人物たちの対極。
自覚的に、その生き方でいいのかと自分らも思ってるようで、夫が、かって想いあっていたかもしれないその同級生と一夜を過ごさせてやろうという余計なお世話までついてくる。
つまり、みんな、いい人なのですな。
その枠組みにいてもいいのかわからなくなったときに、枠組みに忠実な夫の言葉より、枠組みからちょっと逸脱する力のあるもとモガ小姑の言葉の方が重いのは仕方ない。

あくまでも、コミックのすぐれたアニメ化であって、とことんを追求したトップクオリティアニメではないけれど、いろんなものが補い合って、よい映画になった。ほんわかしているが、よかったと手放しにいうには、ちょっときつくてつらい。

終わり近く、孤児のシーンだけ違和感あった。
それまではすずの視点でゆっくり時間が経過していたのに、子供がいきなり原爆の下でわざとらしく右手に受傷したおそらく母親に死なれて、コマおとしで死体にハエがたかり、そこから、ころがした海苔巻き(?)に寄ってくる描写までは、時間のリズムが違いすぎる。
このシークエンスを入れたいのはわかります。原爆下というのが日本以外ではわかるかな。
場面としては原作どおりなんでしょうが、コミックは自分のペースで読めるがアニメは時間が一方的に流れる。リズムが違うのがそのままきてしまう
難しいですね、ここは。こういうコマ落としが、すずと関係のないところであと2か所くらいあったら馴染めたと思う。
孤児になった経緯はなしにして、弁当食うふたりのところに孤児がただ暗闇からでてくるのでもええようには思いました。
でもまあ、違和感がないからいいとは限らないし。

すべての登場人物がいとおしい。
悲しくてやりきれないので原作を読む気にならないw ネタがネタだけに聖地巡礼はせんやろなあ。
クラウドファンディングで最後に名前のでる快感を覚えた人が、これで増えたらいいと思います。

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