お客様はお引取りください2009/12/02 22:16

それぞれの眼で矯正視力0.8(レフ-3D)の受診者がきて、白内障手術してくれという。私が手術はまだいいでしょうというと一瞬理解できなかったらしい。うちでは車が運転できる矯正視力ではやりません。
手術できる当院で今後定期的に様子見て欲しいというので、いいですが4ヶ月おきに視力測るだけですよというと、結局いきやすい開業医にいくといいだした、まあ好きにしてください。もといっていた開業医の先生からは、白内障手術(最近では水晶体再建術ですね)すれば近くも遠くもしっかり見えるはずといってきかないひとがいくとの情報はすでに入っていて病識や受容能力に問題がありそうというのはわかってるし、受付でもこの人理解能力が危ないかもという受け答えがあったらきっちり診察室に情報は来る。多焦点眼内レンズなんてもちろん勧めません。医者のネットワークを甘く見てはいけない。

それで思い出したがまえにこういうこともあった。
外傷性角膜穿孔の入院患者。中堅が主治医。角膜は縫合したが穿孔は水晶体前嚢にも達していて皮質が混濁膨化しつつある。水晶体をとったほうがいいと思うがなかなか納得してくれませんと中堅が泣き言を言うので、まあ部長のほうがちょっとは重みはあるかなと、でていって話をした。
角膜は縫合したが、今後水晶体もとったほうがいいという話について、明日が手術日なのでちょうどいいと思います来週まで待つのでもかまいませんけどたぶん悪くなる一方ですよと説明した。あとあと大丈夫という保証がほしいのがひしひしと伝わってくる。直接の担当医であるうちの中堅には、こうしたら100%治るという話が聞きたいといってるらしい。そんなもんあるわけありません。角膜縫合してまたすぐに手術して大丈夫でしょうかという。角膜がそこそこくっつくにはもっと時間が要りますが水晶体に傷が入っているから炎症や高眼圧が起こると思います。その状態で何ヶ月もおいときたいですか。どうせ水晶体とるならまた切開創は入るんだしいっしょ、そもそもこのままおいておいていいことはあるようには思えませんし、自分の目ならそうします。状況に応じてできるだけのことはしますが結果は神様にしかわからないし、それが不納得なら手術しません。医者はべつに取引してるんじゃないから、はじめにいう選択肢がいちばんいい治療法ですよ、それがおいやなら別のやりようも考えますが予想される結果は悪くなるばかりです、よその意見をききたいならどうぞそちらで納得のいく治療をうけられたらよろしいです、ご自身の眼ですからね。
果たしてそのあと息子さん(まあこのひとがあれこれいうのが最大の問題なわけだが)が、新幹線でいく都会にある有名眼科病院でセカンドオピニオンをとかいいだした。
もちろん、どうぞどうぞあっちできっちり治療もしてもらってくださいと、紹介状作って即退院。だって入院中は基本的には他医療機関にかかれませんからね。
この調子ではあとあとなにがあったところでなにかと不定愁訴的にあれこれいうに決まっているのでこちらにとってもさいわい。信頼関係なんてものをはじめから成立させない患者や家族というのが時々いるけど、けっしていいことはおこらないんだけどなあ。たいがいそういうひとはビッグネームにすがろうとする。

この有名眼科だが、通えるはずのない遠方からの患者に、保険適応のないあたらしい治療を行ってけっきょくうまくいかなかったという実例をみて以来あまり信用していません。あとあとフォローできない相手に実績のない治療をしてはいかんやろう。でもまあ、名前で医療機関を選ぶ患者にはそういうこともおこるということです。