スペクトラルドメインOCTのデモ2010/03/26 21:58

OCT (optical coherence tomograph: 光干渉断層計) という器械がある。黄斑部かいわいの網膜の立体構造をある程度の深さまで描写してくれる便利な器械である。
保険適応になって、眼科開業医の先生もどんどん買ってるようだ。内科開業医の先生がCTをもってたりするのと同様に、日本以外じゃふつうないような設備が一般化する保険点数の魔術を思うのだがそれはともかく。
10年近く前に出た Zeiss 社の OCT3000 (OCT3) なる器械がすぐれもので、世界標準といっていいとおもう。うちにもある。しかしいかんせん古い。タイムドメイン方式で遅いし粗い。実用上はそう困らないのでずっと使っているが、さすがになんとかせんといかんかと思い、最近のスペクトラルドメイン方式の OCT マシンを順番にデモで借りることにして。はじめに N 社を借りる。ついで、 Z 社、あとは O 社 H 社それに T 社が控えている。

おそらくどの会社も根本的な違いはないと思うので、はじめに借りた日本の N 社の感想と、一般論を書くのだが。
N 社のものは早い。ただしくてスイープごとの加算は多いが、スイープまるごと瞬きなんかで失われたら使えないのは OCT3 といっしょ。もうちょっと細かくなってほしいともおもう。前眼部もないも同然だ。
で、たぶん今後ほかの会社のものを借りても、別次元のよさというのはないと思うのだ。 OCT3 を細かく早くしているが、まったくあたらしい情報というのはほとんどない。逆にこのへんで頭打ちかとも思うので、そろそろ買うタイミングと判断している。まったく OCT3 というのはたいした器械だったわけだ。
今後進むべき方向は
1) 精細化 細胞まで見える
2) 機能との関連  dye などを使って activity を描写とか、吸光度と組み合わせるとか
と思うが、それはあたらしいブレイクスルーであって何年かかるかわからんしこのままフラットに進んでいけるかすらわからない。ほか、
3) 造影との組み合わせでの血管の立体画像 これもっとさっさとできるようになるかと思ってたのですが。

この手のものをみるたびに、ああ技術の進んだええ時代やと思うが、その結果データが増えてもわからんことが増えるばかりで、結局その謎を解くには人類の金も時間も足らずにそのまますべて消えていくんだろうなあとも思うのである。宇宙探求もいっしょ。
これを、15年前、基礎の研究室でみんなでだべってるところで言ったらボスに「すかしたやっちゃな」といわれた。ま、こういう考え方に流れたあたりでマジでサイエンスをやる資格はなかったんだろうとは思う。