安い値段で均一な品質 価格コムもしくはユニクロ的医療2010/03/09 21:11

街中の楽器屋で、ヤマハのサイレントギターを触らせてもらった。膝に乗せた感じは変だけど指の練習を深夜や出先でするのにはよさそうだし、考えますといって退去、よろしくお願いしますと頭を下げられた。
ネットの値段より5000円高くて、その値段にするといろいろつけてくれる店もいくらでもある。そこで、街中の店で値引き交渉、というのはありかもしれないが、この時点でネットで買う人が多いだろう。
それをやってるうちに実物を触れる店がなくなる。誰も買わないからである。

ユニクロだってそうだ。そこそこ悪くない。でも、あれが出たらもう市中の洋服屋はやってられんだろう。私はたまに仕立てをしてもらうが、そこは、ふだんは舞台衣装とかをつくっておられる。そういう店が余技でやるから続くのであって、一般市民相手に自前で仕立てしてそれだけでやってる店はたぶん絶滅危惧種だろう。

医療ではどうか。
ほとんどの国民が、そこそこのレベルの公的保険医療を享受している。みんな一緒という路線を愛する日本人が、医療ではいちはやく、みな一緒いざというときは総倒れというシステムを完成した。その結果医療はパッケージという錯覚が生じ、受診制限がないもんだからいくらでもドクターショッピング。医療の格付けなんかしてその錯覚を煽ること。
すごく珍しい医療は自分でやってくれということになっているが、なんで有効な医療が対象じゃないとねじこむやつがいてそのたびに対象が広がり、安いものだから粗末に扱われ破綻寸前。
しかも、ユニクロと違って、そこそこで満足しない人間が増えた。命は大切だから妥協できないそうだ。それでは公的医療はもたないのだから自費でやったらどうかと思うが、命に値段がついてはいけないらしい。

値段につりあわない品質を、命が大切とかいって求めたって、大切なのはわかるがお金がなきゃなにもできないんだからね。
ユニクロでオーダーメイドは求めんやろう。マンツーマンの要素の強い医療でネットの情報がどこまであてになるものか。

消費者が価格コムやユニクロに走って対面販売のまちなかの店を大切にしなければ、選択肢がどんどんせまくなってたぶん結果的に国も文化も滅びる。
しかし、それ以前に、公的医療は、それ自体が価格コムやユニクロのようになって、その結果粗末な扱いの末に滅びつつある。
通信や物流のある一定の条件をみたしたときのみ価格コムやユニクロが成り立つのだろう。それらが成り立ったこと自体がその条件を破壊していくのだろう。暮らしの手帖が戦後はじまったところでこの結末は決まっていた。そこそこのところで皆様満足しないから。

論旨すじみちが混乱破綻しているのはわかっているが、とにかく価格コムとユニクロ的なものはいけないと考えるに至ったわけだ。で、使わないかというと使うのがこの話のどうにもならないところであるが。便利だからねえ。

手術2010/03/09 23:34

若手の、網膜剥離硝子体手術につく。どこを押したら見やすくなるのかわかってなくてもたつくことはなはだしい、内視鏡も使いこなせない。白内障もして2時間強かかって、みていて疲れた。
あたりまえだ。彼は黄斑部のちょこちょこした手術にはそこそこ慣れたが周辺部まで身を入れて処理する手術は初めてだからだ。
どこまでやればいいのかわかるまでまだしばらくかかるだろう。まともな才能がなければ、どこでやめたらいいのかわからずいつまでもいじりつづけるだろう。
こういうことは、実体験で学ぶしかない。つまり、目の前の患者が体験素材ということである。申し訳ないがつねに目の前の患者は新素材であって、医師が未熟なうちは戸惑うことも多かろう。いや、歳食っても、戸惑うことが少なくなるだけで、なくなることはないわね。
経験値の高い医者でも新人でも保険点数はかわらない。
そこそこの経験があってかつ若手を指導する医師の本音で言うと、この事実が、おしかけてくる患者を、若手に向ける口実になるのである。つまり、値段は変わりません、医師の質のの違いは公的保険制度ではないことになっていますと。

自分でやったのは、Hotz術(久しぶりだわ)のほかは、21歳の白内障、28歳のトラベクロトミー、32歳の経強膜網膜剥離手術。なんでみんなそんなに若いんだよ今日は。