映画 Pacific Rim 感想2013/08/18 00:50

監督なりに、せいいっぱい「怪獣映画」「巨大ロボット戦闘もの」のテイストを、ハリウッドプログラムドピクチャーに放り込んでくれている。

だから逆に、彼我の違いがよくわかってしまうのですが、魂はそこそこあってると思うし、そもそも日本でもわかってないギョーカイ人たちの作るいろんなもんのリメイクとは比較にならない完成度です。
ここはまあ素直に「ありがとう」といいたい。


そりゃまーいろいろ細かい不満はある。こっちもそれなりに古い特撮のファンですからね。以下まず、ないものねだり。

設定で言うと、、、

>ハリウッドの、エイリアンによる地球侵略ってほんと設定どれみても一緒。まあ東宝シリーズと比べてなにか言えた義理じゃないが。

>あの状況で脱出ポッドがふつうに裂け目を通って戻るのが不思議。だいたい、出てくるほうはいいのか?

>怪獣が出まくってるのに香港がいまだに海の際でネオンだらけ。10年もたってたら、みんなもっと内陸に逃げないか?貧乏だから無理というようなことではないと思うんですが。

>「怪獣」にしがみついたまま大高度上空に至り、ぶったぎって落ちてくるシーンは、あの程度の逆噴射じゃ、地面に落ちたらそのまま香港がなくなるんじゃないですか。ガメラでもなし「怪獣」にぶち抜かれる程度の代物なのに、中身が生きてるのも説得力がない。せめて設定として海に落とせよ。つか、飛ぶんだったら壁意味ないな。

見せ方で気になるところ。

>ポッド使うなら、通信の途絶えた後、海で爆発が吹き上がり、舞い上げられたポッドがじゃぼんと落ちてきて、という見せ場があってしかるべきだろうに。

>「怪獣」の動きが早すぎる。東宝映画を念頭に置くなら、怪獣どもは自分の重みに耐えながらどっこいしょと動くもんなのですが、ハリウッド製ジラもそうでしたがなんでこうもしゃかしゃか動かすんだろう。重厚さが足りない。そこはハリーハウゼン趣味なのか。

>「怪獣」そのものも、もっとひと目で区別できる個性と、愛嬌(?)が欲しい。見ていて区別が付かないので面白くない。クローンといったって反撃に対応して変化してる設定なんだし。

>音楽がこの手のSFの、最近の常道すぎる。他の映画と区別が付かないのは仕方ないにしても、この音楽ラインはせいぜいエイリアンとの空中戦闘向けで、巨体のぶつかる「怪獣」もの向けじゃないと思う。

>日本映画じゃないから見得を切らないのはあたりまえにしても、せめて菊池凛子が、決死で乗り組む司令官の後姿に敬礼するぐらいのくさいシーンは、ひとつくらいほしかった。赤い靴がそうだって?w

それでも、伊福部サウンドを思わせる低いリズムとともに目の前を「怪獣」が横切っていく冒頭には、涙が出そうになった。

むかしの特撮ファンを、ところどころでちくちく泣かせてくれる。
菊池凛子のメイクは水野久美によく似ている。ファイナルウオーズではない、念のため。
腕はしょっちゅうもげるし、チェーンソードはいかにもな成形だし、暴走はするし。アニメもちゃんと見てるんだろうと邪推。
壁を作ってはこわされるあたり、たまたまかもしれんが今放送中の「進撃の巨人」を思わせる。
裂け目あたりでエイリアンたちがあれこれしてるところもわざとらしくてよい。現場の作業員とかなんやろなあ、、、、、
ヒロイン記憶再生シーン、いまのハリウッドじゃ炉っぽくするのは無理やろうしこれはもうこんなもんでしょう。
戦闘シーンで、ロボットがオフィスビルに突っ込んだらその奥の机の上で置物がこちこち動き、そこからまた外に視点が移動する。CGが一般化して、大俯瞰から目の前の距離まで自在に、画面を切り替えず視点の動くのが気持ちいい。
ただ、大俯瞰の中で、もっと群集を動かして欲しい、本多猪四郎にオマージュするならそれ重要。昼の明るいところ設定ならなおよいが、合成が難しいからねえ、、、、
いまのものとしては、「怪獣」を商売ネタにしてしまう中国人、というのが実に良い。組織存続の理由付けにもなってる。

そして、日本でのアニメは、見せ場の設計については、はるかに先をいってしまったのもよくわかる。裂け目から生還するシーンは、合体メカ設定を生かしきった「トップを狙え」のラストを知ってしまうと、いかにもありきたりで感動に欠ける。それより、もっと科学者珍コンビの「怪獣」とのシンクロ設定を生かしてもよかったんじゃないかな。

かっての日本では、時間と金かけて怪獣映画作ってる間に、毎期放映やOVAで大量消費されるアニメで奇跡が何度もおこった。ついに特撮怪獣ものが絶えてしまったのも無理はない。平成ガメラがなんとかなったのもアニメからの強力なフィードバックがあったからです。

だからまあ、いまさらアメリカでよくやってくれたというしかない。北米市場では惨敗だそうです。


最大の違い。
日本の映画では、ときに怪獣は神になる。初代ゴジラは荒ぶる「破壊神」である。モスラは「守護神」、平成ガメラは「護法神」といえる。
この映画に限らず、ハリウッドには、天の意志としての巨大生物、という視点がない。
そこはもう越えられない壁なんでしょうかね。

ところで、パンフレットを見た娘が、「わざと人間が中にいるような着ぐるみっぽく作ったんやて、ゴジラみたいに」といった上で、「モスラも中に人間はいってたん?」
モスラの中にいても、やることないと思います。