ボランティア活動のスタンスについて2012/01/31 19:25

ボランティア活動というものがある。

欧米だと、僻地医療のために、豪華な帆船に医者を乗せて1-2年かけて世界を回って寄港地でボランティア医療するというプランをみたことがある。眼科でも、豪華な飛行機に眼科医手術設備一式のせて回るというものもある。
賛同する金持ちや企業からのサポートでやるのだろう。ここには「やりたいからやる」「やりやすいようにやる」「いいことなんだからいいだろ」「嫌な思いしてまでやることかよ」という発想しかない。国境なき医師団の態度にしても基本的にはそうである。
自分がその場でやりたいようにやるだけであって、自分らがいなくなったあとその場の医療がどうなろうが知ったこっちゃないのである。実際、たとえばハイチの地震では、ボランティアが入り込んであれこれやったおかげで地元の医療がなりたたなくなったという。後のことを念頭にした利益ベースで考えないから当然だ。
日本人でもこういった心の自由な国際医療ボランティアのベテラン(笑)はちゃんとおられる。「やりたいからやる」「できるからやる」という態度のお金持ちであって、えらいと思う。皮肉ではない。これを「神様目線」と私は呼ぶ。

私もある種の医療ボランティアに行ったことがある。私自身がそういうところでどの程度の腕があるか知りたかったからで、ひとのためにどうしようという殊勝な志があったわけではない。
そこで感じたのであるが、こういうものにかかわる日本人たちには、皆が皆とはいわないがひとつのパターンがあった。手助けしてやれば、そのうち自分でなんとかできるようになるだろう、そのために自分たちはがんばるというのである。ちなみにこの発想は自分らにも向けられる。自分たちの活動を発展させるために、きっちり組織をつくり、若手を育てよう、というやつだ。「上司目線」というのか。

さて、この手の「相手を育てるためにする」上司目線の発想と、上述の世界標準「俺が今やりたいからする」神様目線の発想のどっちがまともかというと、どうなのでしょう。
医療ボランティアを必要とする地域をみたときに「遅れている」「貧乏だ」と同時に思う人は多いだろう。しかしこの2つは違うものである。
「遅れている」ものは、明治後の日本が技術的に西洋に追いついたように、手助けすれば自ら努力しておいかけてくる。手助けも本当はいらないかもしれない。上司目線ボランティアは相手がこのレベルの人間であることを前提にしている。こういう地域は限られていると思う。
世界の大半をしめる、ただの「貧乏」は、手助けしても自助努力を生まない。さらにぶら下がる姿勢を強めるだけだ。
私の経験でいう。現地の医療体制がそこそこできてきて、じゃあ日本人といっしょに地域医療をやろうという姿勢になったかというとそうではない。「日本人がやりたいならボランティアで仕事させてやるし、その手伝いの地元医師にも金出してやってくれよ」ということになっていったのであった。

というわけで、はじめの調子からは意外かもしれませんが、私は、「ボランティアなんて神様目線でやるもんだ」と思っている。

自分のためにしていてなにが楽しいのかという向きもあろう。
だが、たとえひとときでも他人に恩恵を与える力があれば、自分としてはうれしい、というのは、全能感を求める無力な人間としての、とても控えめな喜びである。水がほしいという者に水を飲ませればそいつはとりあえず今日は死なずに済むのである。明日以降のことは別の話だ。今日の分は神様が自分に割り振ったのであって、明日の分はまた神様に考えてもらおう。
医療ボランティアに限らない。
ある状況をとりあえずなんとかしたいと思うなら、やりたいものがその場でできることをまずするのが出発点です。それはその状況をみているのが嫌な自分を救うためにするのであって、人に尽くす自分や指図する自分に酔うためではない。
人のためだの世のためだのあとあとのためになるようにだの、変な理屈はつけないように自覚するだけで、ものごとの風通しはずいぶんよくなるように思う。

「俺自身のためにやってるんだ」という開き直った立場の押し付けボランティアのうざさ鬱陶しさは想像を絶しますが、それは次のステップの話として、ここではおきます。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://inakameishi.asablo.jp/blog/2012/01/31/6314023/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。