多焦点眼内レンズの今後2019/12/14 16:04

アクセスフリーのところにニュースがなかなか出てこないのですが、、、
以下、M3からの引用です。

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中医協総会は13日、2020年度診療報酬改定で、厚生労働省が提案した白内障に対する多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を選定療養に位置付け、通常の水晶体再建術に関する保険診療との併用を認めることを大筋で了承した。
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ということで、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建が選定療養になる方向のようです。

これは、差額ベッドみたいなもんで、保険診療のなかで、そこのところだけプラスで自費がもらえる。ふつうの白内障手術と同様に行って、レンズの差額は自費ということです。
選定療養費については、以下は wikipedia。

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健康保険法等を根拠に、日本の公的医療保険において、被保険者が保険給付の対象外のものを含んだ療養について、保険対象部分の保険給付を行うものである。 健康保険法等の改正により、2006年(平成18年)10月より従前の特定療養費制度に代わって導入された。 
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前提知識。
多焦点眼内レンズは、遠近両用の2重焦点になってるほかは、値段が高いだけで、通常の眼内レンズと、術式も術前後の対応もおなじ調節力を復活させるわけではなく、遠方近方の両方の焦点が眼内にきて、より見える方を、頭が選んでみている。ひとによっては変にぎらつくという人もいるなど、一定の率で、なじめない人はいる
水晶体の加齢性変化として水晶体のタンパクが変性する。また、水晶体嚢のなかから水晶体タンパクはでていかないから、水晶体上皮が増殖、実質となったものはそのまま核の部分に濃縮していくため、水晶体自体重く、固くなっていく。
その結果調節力をなくして「老眼(老視)」になるし、タンパクが透明性を失い「白内障」になる。しかし、それらは自覚症状として同期しないこともある。
現在、「白内障」については公的保険で治療できる。しかし、「老視」そのものは、検査はともかく、治療はいままで「老眼鏡」「遠近両用コンタクト」といったもので、それらの購入は基本的に自費である。

白内障手術するときに、遠くも近くも見えるちょっといい眼内レンズ使いましょう、その分自費で高くなりますよ、という感じでできるなら、歯科の材料を金属じゃなくセラミックにしましょうとかいう感じで別におかしくない、ようにみえる、、、が。

白内障ないのに老眼対策に手術する場合、眼鏡に関する対応を考えると、保険適応ではありえない。
白内障があってそこに遠近両用のレンズを入れるにしても、白内障手術同様に行う水晶体再建分を保険にするとして、レンズ代はどこまで公的に負担するか、そこをどう制度的に整合させるのか
そこが問題ですね。

白内障もない水晶体を手術するのはクリアレンゼクトミーといわれて、金儲けで手術する医者のやることという嫌悪感がまだふつうの医者にはあるようには思う。

しかし、「老視の治療」という名目で、恥とも思わない目医者が出てきてもおかしくない。正当化できれば胸が張れる。

ただし、繰り返すようですが、白内障がぜんぜん重篤でもないのに、老眼対策に白内障手術を公的保険診療でやるのは、現状でも適応はない、まちがっている、のですよ。

白内障で視力低下してるわけでもないのに、老眼があるからこれにかえましょう、といって手術に導入する施設があるのは、現状では、先進医療という、一種自費みたいな扱いの現在はそんなに違和感ないのです。いやあかんのやけどね。
この先進医療制度への適応が終了するのです。

多焦点と単焦点の定価の差は10万程度、選定療養となるとその差額のみ自費になる。それ以外の部分、手術点数による12万円ほどと、それにかかわる受診、検査、投薬等の点数相当数十万円まで、のこりすべて公的保険医療の対象になる。老眼鏡は保険で買えない、自分で買いますわな。

理性的な人間なら、通常の白内障に対する水晶体再建にかかわる眼内レンズの扱いでも、眼内レンズ代は一定額のみ保険負担、レンズによっては差額をとって可、というシステムにしてしまうのもありと思うのでしょうが、それは、もともとそうなっていればの話。視力低下のない目の老眼治療を巻き込んでしまうとたぶんまともに運用できなくなる

老視は、まず間違いなく誰にでも来る
これに対する高額な手術治療の大部分を、ええとこ3割負担の保険診療でやってしまえば、やるほうはウハウハかもしれんが、保険財政はひっ迫しまくる。

いや、誰も「老視」で手術はしない、それだけじゃ保険適応ないですから。
それが目的であっても、当然、白内障があるふりして手術することになる
支払者側からは、本当に白内障があるのかという確認が入れられるシステムにしろという要望がそのうち来るでしょう。

この選定療養する施設についてはまずコントラスト検査など、施設基準をつくってそこに入れるという対策が考えられるが、本来の白内障がしっかりあるのに入れられない、というのもおかしい
症例の多い施設はカルテチェックで審査しまくるのだろうか。インチキカルテ記載のタレコミで個別指導来んかね?
これを機会にカルテをオンラインで支払者がチェックできるようにしたい、そうじゃないと払わんとか言い出さないだろうか、というふうにオンラインカルテチェックできないとさせない医療が出てくる可能性がある。うちは紙カルテなんだよまだw

そうでなくても、ええかげんな施設が続出して、コンタクト検査料みたいなしっぺ返しが来そうで嫌やなあ、と思っています。
クリアレンゼクトミーを保険でやって大儲けを、かって白手術で大儲けした夢もう一度で狙ってるのは見え見え大騒ぎしてたのは白内障眼内レンズ学会の重鎮たちでしょう。
いやもうほかにブルーオーシャンが残ってないのですよ。

正直、インプラントみたく自費にしとけと思う
コンサバですみませんが、眼鏡で済むんだからね。
システムのトラブルや不正行為があたりまえのように予想されるのに、なんてことを、と思ってみております。

贅沢ものとしての医療だってこの世にある。そろそろそれを認めてはどうかなあ。