再会の映画と、アニメ「君の名は。」2016/10/09 15:24

再会、というのは映画でも重要なモチーフです。

めまい」そっくりな女性と思ったら本人で、殺人の謎解きの挙句また失う。
雨月物語」死んだ妻に一夜だけ出会う。  田中絹代はもうこのときおばさんですが、再会からラストまではすごいです。
黒い瞳」一度は追った女性のもとに再びいけなかった男が、落魄してのち知り合った男。その妻が、どうやらその女性らしい、顔を合わせることになるであろう前に映画は終わる。
天井桟敷の人々」クラウンのパントマイム役者が、5年想い続けた女性と一夜だけ過ごす。謝肉祭の朝、追う男を、クラウン仮装の大騒ぎが阻む。

再会のモチーフをもちいた映画に一時はまっていた私を、再会映画ファンと呼んでくださいw

一度は愛し合った男女を、どう再会させるか、ストーリーを考える人たちは苦労してきたらしい。
昭和28年の「君の名は」については、再会なかなかしないのが見せ場と星新一が書いてたような。amazonではプライム無料ビデオじゃないのであらすじだけみると、再会した後それぞれの相手が入り乱れて gdgd なようでして、アニメとは主点が違う。あたりまえですが。

で、アニメ「君の名は。」見まして。ネタばれします

「時空を超えて入れ替わった二人が、歴史を変え、互いを忘れながらも、求めあい続け見かけたときに気づくというのがあらすじですな。
きれいというのか、無理やりというのか。

どこもここもどっかで見たような話とシーン、いろんなアニメをはじめとするもとネタをそこそこきれいにわかりやすく再構成してつくりあげたということかな。
最後10分は「それでどこで再会さすねん」てな感じで見ていた。

どうでもいいけど、入れ替わったときに胸をもむのは「転校生」を思わせる。田舎町で友人カップルがいて、というのはもうどのアニメとかいう問題ではない定番。山の奥のクレーター、「ハウル」っぽいね。日本の風土であれが草原沼地のまま木も生えないのはないやろうとは思いますが。

アニメーターがどんだけ死んだかわかりませんが絵はきれい(強調)だし、どのシークエンスも前後15分はわかりやすくつながってるし、テンポよく気持ちのいいシーンを出してくるし、ぼーっと見ている分にはなんら不都合ない。ドラマとして取り返しのつかないことはおこらず不愉快な場面もなく、アニメ画面上の日常そのものがノスタルジーにあふれている。
食いやすいおかゆとか、レンジ食品とか、日清のリッチヌードルフカヒレ味のような作品です。

このお話は、しかし隕石が落ちてくるシーンまで、非常に設定に苦労している。
入れ替わるという不思議現象は「むかしからその神社の女子子孫におこってきたこと」で、あっさり日常化させてしまった。最後の最後に市長が避難訓練の形で非難させたらしい(新聞でそう見える)のも、代々起こってきたことを最後に思い出したから、という設定なんでしょう、ばあちゃんに押し切られたか。ご神体の本体はたぶんクレーターの隕石でしょうが、その神社の神様が、この日のために巫女を介してやってきたことなんだ、で、説明終わり。そのクレーターのへりで時間を超えて会わせるために、かはたれどきについて繰り返し解説。

逆算型の設定にがんばりすぎて、かえって違和感がありまくるのがこの釈然としない気分のもとか。

で、ご都合設定に苦労しまくって隕石落としてふたりの記憶も記録も消したあと、再会に収束するまでが、それまでの無理に必然性を重ねた展開に比べあまりにもさらっとしすぎ、というか、雑
最後はもうくだくだいわず、気持ちよく流してくださいと、意図的にそうしたんだろうかね。老人になっておたがい孫に手をひかれて再会とかいうよくあるひねり方じゃないのはよかったんだろうけどそれにしても、そこだけ素直すぎる。

壊滅状態の地元からヒロインも友人カップルも東京に出てくる、というのはまあありえる。
ですが、人口も多く交通機関も入り組みまくりの東京で、ああいう、それぞれ特にそこにいるという必然性に欠けたあっさりタイプの再会はまずありえないと思うのですが、それが「奇跡の力」か?神様そこまでアフターケアいいのか
男は建築会社系にいったようだし、女の町に復興関係で出かけて、市長の娘として地元で頑張る女と再会、とか、にしたらよかったのに 。そこですれ違うけどわからない、でもいいけど、さらにありきたりかなあ。ま、「ボクの考えたストーリー」ですね、これじゃw

再会を売る映画としては再会のカタルシスがなさすぎる、と言わざるをえんか、いや、再会を売ってないんかな、再会部分はおまけに見える
再会映画ファンとしては不満だww
けっきょく再会しない「秒速5センチメートル」より、ましってことか、すみませんがあれはあまりに辛気臭くてコミック版途中でギブしました。監督自身も反省したらしい(伝聞)。

それもこれもまあ、私にとっては感情移入の邪魔になった部分ですが、気にならない人には気にならないだろう
監督が、そこそこ納得行く形で、やりたいようにやって、売れてるんだから、そこはなにもいうところではないです。あたりまえのことですが、一筆いれておく。

ここはさすがにご都合過ぎやなあとか思ったところ。だからっていけないとは思いません、念のため。
スマホの日記は消えるのに絵や記憶はしばらくそこそこ健在。
過去の東京に出かけてお前なにとかいいつつ組紐のやりとりして、しかもそれを手首にずっとしてるのにそれが山の夕暮れシーンまで思い出されない。
前に隕石が落ちてきたんだしまた落ちるかも、って、火山じゃなし、隕石に関しては前におちてこようが、そこにまた落ちる確率は上がらんやろう。
神社から最低1キロぐらいはみんな離れてほしいもんですが、そんな時間があるようにも思えない。
口噛み酒、あの環境でカビも生えずにできるのか。