プレゼン能力 ― 2016/09/27 13:33
足の調子が悪くて活動性低下しております。
基礎系の研究室にいたころ、生理学系だったが、ちょっとした研究発表会や講演会がよくあった。
で、最後までみんな黙って聴くということはあまりなくて、わからないことがあったらその場で声を上げて質問する、というのがふつうだった。
アメリカに行っても、カリフォルニアだったからかもわからないが、少々大きい場所でも、聞き取りにくかったらフロアから「Louder!」つまりもっと大きい声で、という程度の突込みは、まああたりまえであった。
こないだ「マネーショート」なるリーマンショックネタの映画見てたら、ラスヴェガスでの証券業界のコンヴェンションの会場スライドプレゼンに登場人物が、手を挙げて大声で突っ込むシーンがあった。質問は最後にとまず言われていたが、日本ほど、違和感のない行為なんだなと改めて思ったわけで。変な奴、扱いされてましたが、変な奴がいることも、そう思われることも、個人主義社会では我々の社会ほど抵抗はない。
研究とか発表というのは、相手がわからないと意味がない。だから、わかりにくいことでその場で質問することについて、本来、そんなにバリアがあるべきものではない。相手がわからなければ、話をしている意味自体なくなる。
もちろん、話を理解するだけの知識があるのが前提ではあります。
なもので、眼科の世界では、どの会に行っても、どんな下手なプレゼンであっても、いや聞き取り自体ができない状況でも、みーんな黙ってきいてらっしゃるのがとても違和感がある。
それが、当たり前らしいのである。
その分野についてよくしってる偉い先生も、黙って聴いてらっしゃる。
知人が、小さな発表会で、アメリカ式にいろいろフロアからきいたら、そのあと、わりとやんちゃで若いころ知られた先生に「あれはあかんで」と決め付けられ、面倒みたこともない相手に先輩ぶって偉そうにいうんじゃねえと気分的にキレて、2度と近づかなくなったそうである。日本人は極端に走る。
これでは、プレゼン能力そのものが育たない。終わった後、どうせ、聞き取りにくかったとかちゃんと言ってくれる人もどうせいないからである。
ところで、いまの学会専門医にかわって、厚労省が専門医制度をやるといいだして、実際の運用が具体的にわからなくて困っている人が多い。
各専門の学会や医会と厚労省の委員会とやらが折衝しているようです。
うちの地方の眼科医会関連の勉強会で、これについて、現状やら予定やらの口演がおこなわれた。
その口演ですが、眼科医会のたぶんアクティブメンバーの方でしょう、関東の、名の知れた開業眼科病院の先生でしたが、滑舌はわるいわスライドは会場の割に字が小さくて読めないわで、なにがなんやらさっぱりわからんかったそうな。
知人の眼科医は、あまりにわからんかったんで、質問時間に、さっぱりわからんかったんでこの内容をプリントアウトして配布するくらいのことは眼科医会としてしていただけないかと訊いたそうな。
発表の先生、ごにゃごにゃいうのだが、どうやら、この内容は「日本の眼科」に出る、ということらしいのであった。眼科医会の機関誌ですから出てもおかしくないが、内容はというと、同じ、という。
「だったら、そもそもこんな口演いらんやろう」
「せめてスライドに、この内容は日本の眼科いつ号に出ますと、わかるように書けよ」
とは言わなかったが、思ったそうです。
ちなみに、まだその内容は「日本の眼科」に出ないようだw
大学なんかで長い先生は、内容はともかく、説明してみせることに関しては、まだましなことが多いが、臨床医のあつまりの医会なんかじゃ、そういう教職的背景ないまま立場がそうなってしまい、訓練もなくプレゼンをする先生も多い。
訓練されてない人が、しかもまともな質疑もできない、そういうものに専門医点数のため出ないといけないのはもう拷問ですな。
専門医制度が実現すれば、これは学会専門医と違って学術方面以外についても「研鑽」wを積まねばならないが、講演会の形でしかたぶんそれは実現できないことも多いであろう。
「専門家」という顔をしなければいけない人のよた話を、黙って聞かねばならない、下手であってもフィードバックもかからない、という状況が容易に予想できますがいったいなんのための制度なのかこれは。
by 稲亀石 [医療] [社会] [コメント(0)|トラックバック(0)]
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