加害者の正当化と被害者の矯正2015/11/17 16:20

パリのテロであるが、中近東でのごたごたはもっとひどいじゃないかとか、テロリストにも理由があるだろうまず対話とかいってる人が、どうしても出てきますな。

こういうものわかりのいい言説は、ちょっと上から見ているような気がするところが気持ちいのだろうと思う。
で、なにをいってもいいといえばいいのだが、それを、なにもしない言い訳に使うとなると、ちょっと待てよといいたくなる。

学校でのいじめなんかでもそうである。担当教諭が、「ただのふざけと思った」というのは論外ですが、「いじめられる方にも理由がある」とか言い出すのはなんとかならないのか、いやさすがにそれを表だっていうことはなくなってきているようですが。

カンペキな人間はいない。いじめられるほうにも問題はあるだろう、しかし、それはいじめやその状況の放置の正当化に使ってはいけない。いじめにはきっちり対応するべきで、本人の問題点は問題点として別に対応すればいい話

テロにしてもである。
シリア界隈が悲惨だからこれくらいというのは、何も言っていないに等しい。それをいうなら、フランス革命で何人死んだとかいうのと一緒で、この手の相対化にどういう意味もあるものか。
東に対する欧米諸国のありようがどうかというのは、それはきっちり断罪評価すればよろしい、しかし、テロ自体をそれで正当化させてはいけない、あくまでもテロはテロで抑え込む努力を具体的に行うしかない

なにかというと、「あんたがなってないから」といって被害者を叩きたがる文化が日本にある。悪い事が特にその人に起こったのだから、なにか原因が特にその人にある筈だということです。逆に言うと、身ぎれいで潔白であれば悪い事は起こらないという信仰で、この延長線上にあるのが「9条があれば戦争は起こらない」というアレです。極度の自己責任論と9条主義は同根といっていい。立場は違っても偏狭なところはそっくりでしょ(笑

法律の隅々にまで、この、被害者を矯正wすることで問題をなくす、という思考があるので困るのである。

わかりやすいのは銃砲。
たとえば、銃砲を車に乗せて、車を盗まれて銃砲を悪用されたら、盗まれたものも過失がある、悪い、ということになってしまう。
冗談じゃない、道端に意図的に放置しておいたならともかく、犯罪行為によって入手された道具は、どうつかわれようがその犯罪者が悪い筈です。それが通用しない。
で、なにもおこっていなくとも、自動車のトランクに銃収納して、そこから離れてコンビニの便所に入ったのを見つかったら許可取り消しになる、ということが現実に起こる国なのだ。実害がなければいい、あったらそれを処罰する、にならない

問題が起こるたびに、問題が起こらないようにしろとアホメディアが騒ぎ、それをいいことに行政はルールやレギュレーションを厳しくする。
あのねえ、人間は必ず間違えるし、悪意は防ぐことはできないのだから、問題ゼロは無理だよ。システムを運用するのに必要な「緩み」はつねに残して、あとは現実の結果に応じた処罰で対処するしかないだろう。結果がどうであれこのルールはもうこれでかえない、と、しかし胸張っていえないのよね、完璧を目指すのはいいが、それを実現できないのは「仕方ない」で済ませようとしない

修身斉家治国平天下という考え方は、治める側に都合のいい理屈である。
治めるというのはなにも政治システムで上にいる人たちだけではない。ある枠組みの中で上下関係を作り上げたいものは、勝手な「役割主義」をもって、人に接する。そして、その場で、えらそうにできそうな口実を見つけて指図がましくする。
できもしない、するべきでもない「対話」をしろというのもこの種の手合いである。

なんのことはない、あなたやわたし、ほとんどの日本人がこうであることを、まず自覚するところから、反テロリズムへの連帯に関する言説を考えてはどうか。

「殺された、かわいそう」というレベル、いやそれはそれで大切な感情ではあるが、そういうレベルで右往左往するから、「あっちではもっと殺されている」でゆらぐのです。
ましてや、フランスの政治や中東の状況について冷静に語る言辞をみても「テロを正当化している」と感じてしまうようではねえ。
戦う相手をきっちり解析できなければ、はじめから負けているではないか。

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