眼科用顕微鏡比較 その22013/11/12 16:29

眼科医にしかわからない話。

2年前に Zeiss と Leica の顕微鏡を比べる機会があった。

http://inakameishi.asablo.jp/blog/2011/06/22/5923211
眼科器械雑感 手術顕微鏡 OCT Retcam

で、最近、その下のクラスの顕微鏡を軒並み触ってみた。対象手術は白内障と硝子体注入。

いまは同軸0度がトレンドになっている。まずはそこから。

Zeiss Lumera i
弱いファイバー光源を最高級の光学系でみせる。徹照すれば素敵にきれい。徹照がないと影ができにくいので(斜照明入れてもわかりにくい)私はさっぱり見えなかった。相当に拡大はできます。開放が明るい(絞り値が小さい)のだろうがそのためピントも浅い。こまめにフォーカス動かしてきっちり丁寧にものをみる癖をつけて、はまれば、すばらしいだろうとは思います。M先生が推奨のメールを全国に飛ばしただけのことはあるのだろう。
鉛筆精細画。

Leica 820M
そばのライトボックスからの直射光源、有無を言わさずくっきり見せる。がんがんに明るいのが好きな向きにはいいでしょう。角膜反射は強いとはいえ上位機種844Mよりもまし、角膜表面の界面のうねりはあいかわらずちょっと目ざわり。後嚢は、位相差顕微鏡みたいな 844M より見え方がゆるいなので、どこまできれいにしたらいいか迷わなくてすむとは思う。
パステル画。

Alcon LuxOR
徹照よくなくても、みづらいようで不思議にそれなりにみえる。これらは自称独自照明系のおかげなんでしょう。深度とか徹照の深さとかが売りのようですが、たぶん拡大率とか解像度とかとのトレードオフじゃないかな。角膜反射はそんなにきつくないし、ふつうの人がふつうに使って問題ない。現行のアームはへぼい。
クレヨン画。

LuxOR はこないだ日本にきたところで、値段もやっとついたということです。本国ではかなり安いようだという噂も出ている。本当かどうかは知りませんが。
光学屋として名前も通ってないしタイマーの具合もアフターケア状況もわからないのにあのしょんぼりなアームで(某他社営業は、車でいうとシャーシですからねえと、どや顔だったw)、100年以上の信頼のある光学技術を持つ Zeiss Leica の2機種と、日本での価格設定がかわらないかそれ以上というのは、しょぼいもんじゃないと見せたかったのかもしれません。
すまんが、ちょっとあつかましいというか、まことに日本的値付け。
たくさん注文来たら供給間に合わんからという、余裕ぶっこいたデリバリーピザ値段じゃないだろうねw

それなりの見え方はするのだから、同軸0度のなかで一段安い価格設定にすれば、つか Lumera i と VISU160 のあいだの VISU160 寄りに設定すれば、Leica 同様に、どっちに向かう客もそこそこ呼び込めるだろうにね、 Zeiss にとってはありがたい敵失と思う。まあ、数年内には Visu160 より一段とお得になる、と予想するが。ただ、アームは改良の予定はあるらしいし、本命上級機種も控えてはいるらしいんだけどねえ。
白内障手術も、それやって蔵が建つ時代ではない。やらなきゃ仕方ないレベルでやってる医院も多いご時世に、後発ベンダーがなにを売りつけようとするのかちょっと興味はある。

で、あらためて同軸2度の、前世代機種も借りてみました。

同軸2度は、まず、よい徹照を得るのが重要。斜照明がきついと徹照がわかりにくい。私はいつも斜照明は切っていた。
同軸0度は、少々斜照明が強くてもちゃんと徹照が見える。同軸だけだと影ができないので立体感がつきにくい。
つまり、セッティングの思想自体がかわるのですな。

Zeiss VISU160
VISU150の、2度光源シフトを省略。ワイドビューもつかない。ひとむかしまえの、カタい、スタンダードな、よい見え方。0度の同軸を触ってから見ると、2度ってのは気むづかしいねえ。私は VISU200 が長かったのでこいつはすごく楽なのですが、この機種自体償却のおわった戦略商品なのでいつまで続きますことか。

もと写真部員としてツアイスはずっと憧れではある。
カメラシステムで実際に持ってるのはペンタックスだったりライカだったりw 手持ちレンズは 50mmPlanarZM しかないわ、ってこれコシナ(略

Topcon OMS800
営業氏が、Zeiss ほど見えるなんていいません、とマジ顔でいうのは、謙虚で頼もしいのかどうなのか。旧陸軍御用達由来というのはどうでもいいにしても、過不足なくちゃんと見えるし、ワイドビューもできるんだし、硝子体に使ってた人もいるし、いまさら同軸2度でやるなら、値段によってはこれで十分という考え方はあり。
操作感がいちいち日本的。悪い意味ではないよ。

ちなみに旧海軍御用達は Nikon ですね、いまや、ほとんど光学屋から足洗ってらっしゃるが。
Olympus も脳外なんかで使われるようですが眼科じゃみたことありません。

Takagi OM18
同軸は0度から±2度ふれるらしい。普通の白内障なら何も問題ない。というか、ぜんぜん違和感なく使えてびっくりした。侮れない出来上がり。比較検討するなら見る価値はある。
硝子体注射したときに水晶体の向こうの針先がやや見えにくかったのが、惜しいと思った。もののわりに脚がかさばり過ぎ。かなり安いが、それでも顕微鏡って金かかるんだねと思わせる程度の値段ではある。

さすがに Inami のポータブル顕微鏡は試さなかった。
南アジアで使ったことはあるのですがね。あっちではそのレベルのものでふつうに白内障手術してるが、電動フットスイッチくらいは欲しい。

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