検食室のスプーン2012/09/15 14:34

当直すると、検食することになる。
検食室でいただくのですが、たまにこれどうよと思うことがある。味がどうのというのではなく、カレーやシチューに、検食室には箸しかないのです。

厚紙の折ってヨーグルトなんかに使うものはおいてあるのだがそんなもんでまともに食えない。はじめは奥の調理室にいってスプーンをもってきてもらったりしたのだが、これは我々の仕事ではないという態度。検食室そのものは、物品補充も掃除も総務が管轄しているというのです。
総務に電話して、もってこさせる。そのたんびに、総務の女子が、嫌そうなにやにや笑いで、プラスプーンをどっかから持ってくる。たまにはわしづかみしてもってくる。
総務に行って、スプーンをちゃんとおいてくれるわけにはいかんのかというがごにょごにょ。彼らはルーチンとしての仕事をふやしたくないわけね。
1年以上カレーやシチューのたびにやっていて、まあ頻度は低いのでそんだけかかったのだが、ええかげん頭にきて、院長に院内メールで直訴。

「わかりました」と返事が来て、あっというまにプラスプーンが定数化され、テーブルのうえのスプーン立てに「シチュー用スプーン」と印字した紙が貼られた。

そのあと、救急の師長が「わたしらがどんだけいってもおいてくれなかったのに先生が言うと置いてくれるのね」。あのねえ、こっちだって1年戦ったあげく院長にいっておいてもらえたのであって、決定権者の院長の一言がなきゃどうにもならないよ。

組織人は、状況から判断しない。単純に、決定権者の命令に従う。
私のような眼科の部長は、まあ中間管理職だ。下っ端は院長によう何も言わない。院長はスプーンのことなんか知らない。下っ端の仕事が円滑に行われるよう、決定権者にかけあって、中間管理職はなんぼである。そして、まともに話をきいてこその決定権者。いい院長なのだろう。これに限らずメールにはちゃんと返事をくれる。読まれたかどうかも分からないほどアホらしくなるものはないからねえ。

私がこの病院で行ったもっとも重要な仕事は、検食室のスプーンであるといまも自負している。誰でも出来たにもかかわらず、私しか本気でやらなかったからである。

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