注文の多い眼鏡処方2012/07/11 23:40

視能訓練士がえらく時間をかけて眼鏡をあわせている。
処方のし直しらしい。前にも時間かけてあわせたが、実際に眼鏡屋でつくったら使いものにならないというのだそうだ。
50代後半の男性、むかしはよく見えたが遠視化、矯正視力はどちらも(1.0)いくのだが、乱視の軸が左右違い、斜乱視のほうが、実際に入れると特に近見用ですみが流れて気分が悪いのだとか。

前にそれでいいと本人がいったものの合わせなおしで、受診者もそれはわかってるようでクレームというほどのもんじゃないが、どうやらその筋の人らしく「あかん」「いまいちやなあ」といちいち大声を出す。視能訓練士はみるからにびびりまくってる。

いったん合わせて、前は別の医者が確認したが、今回は私のところに持ってきた。
前とあまり変わらないが、斜乱視を、もう片目の直乱視にあわせてきた。近く用なんだしそもそも乱視自体いるの?ときくと、それはあったほうがいいらしい。

一度はそれでよかったんだから、もうちょっと我慢して慣れるようにしてみたら?というと、そんな我慢して物にあわせるような人生は嫌だとおっしゃる。そういう哲学的な話してるんじゃないんですけどね。

こう合わせるたびに違うとなると、今合わせてもまた違うかもしれないから、あと一度きなおして、今回のでいいか確認したらどうかともいった。何度も来るのは気に入らないそうでそれも却下。

やりとりの挙句、遠用はなれられるか様子見てみるが近く用は我慢できないというので、あたらしい度で処方箋作り直し、備考欄に、作成時に再確認してくださいと書いた。眼鏡屋に投げたわけでこれは禁じ手w

面白いので時間かけて説明してみた。加齢で水晶体が変性して、白内障にもなるし、屈折も変わる。いろんな収差がでて、見え方の質は悪くなるし眼鏡の度も変わるが、レフでは、不整乱視も無理にきれいな軸の乱視度数に変換して出してくるから、あれを素直に使っていつもよく見えるようになるとは限らない。数字はでても見え方がいいとは限らないので、なかなか眼鏡合わせも難しいのだというと、ようわからん話はもうどうでもいいそうで、白内障があるのかと訊いてきた。さあこっちにきた、と、いそいそ細隙灯モニターに水晶体の濁りを静止させて見せたら、ちょっとおとなしくなって、帰ってお行きなすった。

本当に彼に言いたかったのは、時間と金をかけても、きちんと見える眼鏡がいつもできるとは限らないということであった。

とことん探せば納得いく医療がみつかると信じる基地外のようなひとがたまにいる。それを患者力というと高らかにうたう。
冗談じゃない。
無理なものは無理だし、存在しても手が届くとは限らない。
日本人は本末転倒させて手段を目的にするのが大好きである。だから探せば変なひとが変なものを作っているかもしれないが、公的インフラたる施設で、白内障による高次収差を眼鏡でらくらく補正できるとは思わないでください。
そのほかの医療もいっしょ。

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