この症例をどうしろと2011/07/29 00:48

癌の扱い水準があがってきたせいか、末期の症例が眼科に回ってきたりする。

以前のことです。

胃癌の多発転移で緩和ケアの患者だそうだが、「片目のまぶたがあがらない、ちょっとたるんでる」ので、往診してくれと消化器の先生から依頼。
ベッドサイドに行く。かなりがっしりした60くらいのひとだが、数日前から片目があかないというし、実際あいてない。
眼瞼をあげて、眼球運動をみる。その眼は上転もしない。
ま、この状況であれば、動眼神経上枝がどないかなったんでしょうなあ、瞳孔反応はいいので、血管になんかつまったのかもしれません。
緩和ケアで、おだやかに終末期を過ごせるかというとそうではない。いろいろ本人にとっても不快なことがおこっていく。

結膜下出血でやってきた肺癌多発転移の患者。ゾンビのように(とORTが表現した)血の涙を流す。抗凝固剤や抗血小板剤もいれてるのでそのせいかと思ったら眼球突出がじわじわおこってきた。
球後に血腫でもおこったかとしらべたら充実性のかたまりが眼窩内にある。転移で癌性出血かもしれないがこれはもううちではなんともならず、主治医の呼吸器の先生にまかせて、こっちは、眼球突出による兎眼のみを相手することにした。家族は大丈夫でしょうかどうでしょうかというが、大丈夫なわけないですね。娘がナースでまだ話はしやすかった。本人、うんざりした様子。

むかしならもっとはやい時期になくなっていたのかもしれない。
いや、長生きはいいけど、決していい状態で長生きするんじゃないのですよね。
とにかく延命といってもしんどいばかりのこともある。安らかに最後を迎えられるわけではぜんぜんないのである。
なにを優先するか、本人家族も割切りと覚悟が必要やなあと思ったものだった。

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